大磯武

大磯武のプロレスと相撲における軌跡

大磯武（おおいそ たけし）は1944年、富山県新湊市で生まれました。本名は摺崎武二（するさき たけじ）で、彼は大相撲力士としてのキャリアをスタートさせました。大相撲時代の四股名は「大磯浪」とし、1963年に初土俵を踏みました。当初は順調なスタートを見せましたが、1965年には四股名を改名するも、その後は伸び悩むこととなり、1966年には三段目での廃業を余儀なくされました。

大相撲を後にした大磯は、プロレスラーへの転向を決意し、1966年に東京プロレスに入門しました。入門同期には寺西勇や大剛鉄之助など、後に名を馳せる選手たちがいました。しかし、東京プロレスの経営が厳しくなり、次第に他の団体への移籍を検討することになります。最終的に、大磯は国際プロレスへと移籍し、1972年にはアフリカやヨーロッパでの遠征を経験します。

1973年には「第5回IWAワールド・シリーズ」にも参加しましたが、日本国内での活躍には限界がありました。そして1974年1月24日に行われた引退試合をもってプロレスラーとしてのキャリアも終わりを迎えました。大磯は引退後もプロレスへの情熱を失うことなく、フィリピンに移住する決意を固めます。これが彼の人生の新たな幕開けとなりました。

フィリピンでは、「アジアン・プロレスリング（APW）」という団体を設立し、現地でストロングスタイルのレスラーの育成に努めました。この移住のきっかけとなったのは、豊登に誘われてフィリピンを訪れた際の経験です。大磯はトレーナー兼プロモーターとして活動し、多くのフィリピン人レスラーの指導を行いました。

1984年には新日本プロレスからの招聘を受けて、ケソン市のアラネタ・コロシアムにて現役復帰を果たしました。ここではハリス・モンテーロやマリオ・マチュラックといったフィリピン人レスラーとタッグを組み、見事な試合を繰り広げました。復帰戦では強敵相手に勝利を収め、彼の名を再び知らしめました。

その後、設立したAPWは段階的に活動を停止しましたが、大磯から指導を受けた弟子たちによって「第2次APW」として「リバース・プロレスリング（RPW）」が設立されました。現在、RPWはフランスに本拠地を置く「ワールド・アンダーグラウンド・レスリング（WUW）」のフィリピン部門として活動を続けています。

大磯武のプロレスへの情熱と尽力は、彼のキャリアを通じて受け継がれ、次世代のレスラーたちに刺激を与え続けています。彼の軌跡は、単なるスポーツの枠を超え、国を越えた文化の交流の象徴とも言えるでしょう。

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