大剛鉄之助

大剛鉄之助：相撲からプロレス、そしてブッカーへ至る波瀾万丈の人生

大剛鉄之助（だいごう てつのすけ、本名：栄田幸弘）は、1942年3月10日、宮城県仙台市に生まれた。少年時代から喧嘩っ早く、その強さを買われ、1959年7月、二所ノ関部屋に入門。大相撲の世界に足を踏み入れる。

大相撲時代：激しい相撲で注目を集めるも幕下6枚目が最高位

初土俵は「栄田」という四股名だったが、その後「栄岩」、「仙台」と改名。小柄ながら激しい相撲で観客を魅了したものの、幕下6枚目が最高位となり、1966年5月場所を最後に廃業する。

プロレス転向：東京プロレス、国際プロレスを経てカナダへ

大相撲を廃業した同年10月、東京プロレス設立と同時にプロレスラーに転向。旗揚げ当初は道場もリングもなく、選手たちは砂浜でトレーニングする過酷な環境だった。デビュー戦では「仙台強」のリングネームで闘うも、東京プロレスはすぐに経営難に陥り、国際プロレスとの合同興行を経て崩壊。その後、国際プロレスに移籍し、「大剛鉄之助」とリングネームを変更する。

国際プロレスでは前座、中堅として活躍。同期や後輩たちが海外へ武者修行に出る中、大剛は1973年、『'73チャレンジ・シリーズ』でホセ・クィンテロとの金網デスマッチを経験。その後、マッドドッグ・バションの仲介でカナダのGPW（グランプリ・レスリング）へ遠征。リングネームを「トーキョー・ジョー」に変え、バションやエドワード・カーペンティアらと抗争を繰り広げ、メインイベンターとして活躍。ブルーノ・サンマルチノとも対戦するなど、カナダで大きな成功を収める。

重傷を負いブッカーへ転身：国際プロレスの興亡と新日本プロレスでの貢献

1974年、凱旋帰国試合を控えていたが、帰国許可が下りず、後輩を呼び寄せ後釜に据えることを条件に帰国を許される。しかし、帰国途中に交通事故に遭い、右足を切断するという重傷を負う。

レスラー生命を絶たれた大剛は、カナダに残ってIWE北米支部長としてブッカーに転身。「ジョー・タイゴー」を名乗り、外国人レスラーの招聘に手腕を発揮する。国際プロレスとAWAの提携解消に関与し、独自のルートから多くのレスラーを招聘。しかし、この招聘ルートは国際プロレスの経営を圧迫する要因の一つとなり、国際プロレスの解散にもつながる。

国際プロレス解散後もカナダでブッカーを続け、その後、新日本プロレスの北米支部長に就任。キングコング・バンディ、ハクソー・ヒギンズなど数々の有名レスラーの初来日を成功させるなど、新日本の海外戦略に貢献する。1990年代からは新日本の若手選手のトレーナーも務める。

人となり：厳格な指導者と複雑な人間関係

大剛は鬼コーチとして知られ、天山広吉、小島聡、大谷晋二郎ら多くの新日本プロレスの若手選手を厳しく指導し育成した。しかし、その一方で、気性が激しく、周囲との摩擦も多かった。国際プロレス時代には、後輩力士への暴力を振るったり、先輩レスラーを平気で殴るなど、人間関係に問題を抱えていた側面も指摘されている。また、ミスター・ヒトとの確執も有名で、長年に渡る不仲が続いた。

死去

2017年11月4日、大腸がんのため死去。75歳没。

まとめ

大剛鉄之助は、激動の時代を生きたプロレスラーであり、ブッカーであった。相撲、プロレス、ブッカーという異なる世界を舞台に、その類まれな交渉力と強い意志で、プロレス界に大きな影響を与えた。厳しい指導と複雑な人間関係、そして交通事故による右足切断という波瀾万丈の人生は、後世に語り継がれるべきものだろう。

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