大窪寺

四国八十八箇所第八十八番札所 大窪寺：結願の聖地

香川県さぬき市多和兼割に位置する大窪寺は、真言宗の寺院であり、四国八十八箇所霊場の最終札所として知られています。医王山遍照光院大窪寺と号し、本尊は薬師如来です。納経印には「結願所」の文字が記され、結願証明書（賞状）も有料で授与されています。

開創と歴史: 寺伝によれば、奈良時代の行基が草庵を結び修行したのが始まりとされます。その後、弘仁年間には空海（弘法大師）が奥の院の岩窟で修行し、現在の堂宇を建立、薬師如来坐像を安置したと伝えられています。真済僧正の時代には寺領が拡大し、女性の参詣も許されたことから「女人高野」として栄えました。

戦国時代には兵火に見舞われたとされ、複数の文献が異なった記述を残しています。天正年間の記述では、三好勢や長曾我部勢による焼討ちが記されていますが、記録の食い違いや後世の創作の可能性も指摘されています。明治時代にも大火に見舞われましたが、結願霊場として現在まで法灯を護り続けています。

伽藍: 大窪寺には多くの建造物が残されています。山門（二天門）と仁王門をくぐり、本堂（礼堂、中殿、奥殿からなる）、大師堂、阿弥陀堂、宝杖堂などがあります。本堂の扁額には薬師如来の「薬」の字の一部が欠けているのは、奉納者による願掛けに由来するとされています。大師堂には弘法大師像や四天王像、四国八十八ヶ所の仏像が祀られています。宝杖堂には結願した遍路の金剛杖が奉納され、春分の日と8月20日には柴灯護摩供が行われます。境内には歌碑や句碑なども点在し、著名な俳人の句が刻まれています。
標高約450mの高台に位置し、冬期には積雪に注意が必要です。山門は南側の石段を上がった二天門と、西側の仁王門の2つがあります。

文化財: 大窪寺には多くの文化財が指定されています。国の史跡に指定されている「讃岐遍路道 大窪寺道」は、長尾寺から大窪寺に至る遍路道の一部で、丁石や遍路墓などの石造物が含まれています。県指定有形文化財には、本尊の薬師如来坐像（奈良時代末期の作と推定）と鉄錫杖があります。さぬき市史跡には「大窪寺奥の院信仰遺跡」が指定されています。また、境内には樹齢を重ねたイチョウやサザンカなどの保存木も存在します。

奥の院 胎蔵峯寺: 境内から女体山への登山道を進むと、奥の院である胎蔵峯寺があります。空海が修行したとされる岩窟があり、梵字が刻まれた岩壁も見られます。

周辺の番外霊場 一夜庵: 空海が護摩を焚いて災いを鎮めたとされる一夜庵も、大窪寺に関連する重要な場所です。弘法大師と阿弥陀如来が祀られています。

アクセス: 鉄道は琴電長尾線長尾駅から、バスはさぬき市コミュニティバス多和線大窪寺バス停からアクセス可能です。自動車の場合は国道377号を利用できます。駐車場は複数箇所あり、いずれも無料です。

宿坊: 大窪寺には宿坊はありません。

大窪寺は、四国八十八ヶ所霊場の結願の地として、多くの巡礼者にとって特別な場所となっています。歴史、文化、自然が調和したこの霊場を訪れ、巡礼の旅の締めくくり、そして新たな出発の祈りを捧げることが出来るでしょう。 結願後、阿波の北分十里十ケ所を逆打ちでお礼参りする場合のルートも考慮に入れると良いでしょう。

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