大西洋数十年規模振動

大西洋数十年規模振動（AMO）とは？

大西洋数十年規模振動（AMO）は、北大西洋における海水温と気圧の平均状態が、およそ10～20年周期で変動する気候現象です。大西洋数十年周期振動とも呼ばれ、海洋と大気の相互作用によって海水温と気圧が連動して変化する、テレコネクションの一種に分類されます。

北大西洋の広範囲にわたる長期間の気圧や海水温のデータから平均値を算出すると、約10年周期で値が大きく変動していることがわかります。しかしながら、そのメカニズムについては、まだ完全に解明されているとは言えず、今後の研究が待たれています。

AMO指数と北大西洋の熱塩循環

AMOの状態を客観的に評価するために、AMO指数が用いられています。これは、北大西洋の表面海水温（SST）の平年値との差から算出され、指数が負の値を示す場合は海水温が低く、正の値の場合は高いことを意味します。

ただし、地球温暖化による線形的な変化はAMO指数から取り除かれていますが、非線形的な変化を取り除くことは困難なため、若干の誤差が生じる可能性があります。AMO指数の変化は、北大西洋における熱塩循環と密接に関連していると考えられていますが、信頼性の高い海洋観測データが十分に蓄積されていないため、不確実性も残されています。

AMO指数と世界各地の気候への影響

AMO指数の変動は、北半球の多くの地域における気温や降水量に影響を与えていると考えられています。特に、北アメリカやヨーロッパの夏の気候、ブラジル北東部やサヘル地域の降雨量などとの関連性が指摘されています。

例えば、アメリカ合衆国では、AMO指数が正の値を示す時期には、中西部や南西部で旱魃の発生頻度や継続期間が増加する傾向が見られ、逆に負の値を示す時期にはその傾向が弱まることが報告されています。歴史的に発生した大規模な旱魃、例えばダストボウルなども、AMO指数が正の値を示していた時期に多く発生しています。一方で、フロリダ州や太平洋岸北西部では、AMO指数が正の値を示す時期に降水量が増加する傾向が見られるなど、地域によって影響の現れ方が異なることがわかります。

AMO指数とハリケーン

大西洋赤道域の海水温とハリケーンの発達との関係については、多くの議論が交わされており、まだ結論が出ていないのが現状です。AMO指数とハリケーン発生頻度の関連性については、研究者の間で意見が一致していません。

まとめ

AMOは、北大西洋の海水温と気圧が数十年周期で変動する複雑な気候現象であり、そのメカニズムの解明にはさらなる研究が必要です。AMO指数は、その変動を客観的に評価する指標として利用されていますが、不確実性も存在します。しかしながら、北半球の気温、降水量、旱魃、ハリケーンなど、様々な気候現象に影響を与えている可能性があることから、その研究は気候変動の理解に大きく貢献すると期待されています。今後、より詳細な観測データの蓄積と、高度な気候モデルの開発によって、AMOのメカニズムや影響がより明確に解明されることが期待されます。

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