大谷駅 (滋賀県)

大谷駅：歴史と急勾配の交わる滋賀の駅

大津市大谷町に位置する京阪電気鉄道京津線の大谷駅は、標高159mという京阪線内でもっとも高い場所にあります。その特徴はなんといっても、40パーミルの急勾配上にホームが造られている点です。山岳鉄道を除けば、日本の普通鉄道・軌道で最も急な勾配を誇り、独特の景観を醸し出しています。この勾配に対応するため、ホームのベンチの脚の長さも左右で異なるという細やかな配慮も見られます。

歴史を刻む駅

大谷駅の歴史は古く、1879年、官設鉄道（国有鉄道）東海道本線の駅として開業しました。京都と大津を結ぶ鉄道建設において、逢坂山越えの技術的課題から、現在の奈良線ルートを経由する迂回ルートが採用され、その途中に大谷駅が設置されました。その後、逢坂山隧道の開通や東海道本線の線路変更などを経て、1921年に官設鉄道としての役割を終えました。

一方、京阪電気鉄道京津線の大谷駅は1912年に開業。官設鉄道の大谷駅とは場所が異なり、東海道本線との乗換駅として賑わいをみせました。その後、京阪電気鉄道への合併、移設、改札機の導入など、時代に合わせて変化を遂げながら現在に至ります。太平洋戦争中は、旧逢坂山トンネル内で航空機部品工場が稼働し、大谷駅は従業員の輸送のため営業を再開したという歴史もあります。

1996年には駅舎が71m移設され、2019年には磁気券用自動改札機が撤去されました。現在では無人駅となっていますが、歴史を感じさせる遺構や周辺環境は、訪れる人の心を掴みます。

駅周辺の環境

大谷駅周辺は、逢坂峠西側、山科盆地の縁に位置し、老舗のうなぎ料理店や峠の茶屋といった地域色豊かな施設が点在しています。名神高速道路蝉丸トンネル西口の上を通る道を北へ進むと、大谷団地や琵琶湖乗馬倶楽部といった施設もあります。また、歴史を感じさせる蝉丸神社や逢坂の関記念公園も近くにあります。

駅構造と利用状況

京阪電気鉄道の大谷駅は、相対式ホーム2面2線の地上駅です。無人駅のため、改札口は大津方面行きホームの京都側に設置され、反対側のホームへは構内踏切で移動します。前述の通り、ホームは40パーミルの急勾配となっており、これは日本の普通鉄道・軌道の中でも最大勾配です。

利用状況は、1980年代には1100人を超える乗降客数を記録したこともありましたが、近年は減少傾向にあり、京阪電鉄全駅の中でもっとも少ない駅となっています。それでも、独特の雰囲気を持つ大谷駅は、多くの人の記憶に刻まれる駅として存在し続けています。

参考文献

川島令三『東海道ライン 全線・全駅・全配線』 第6巻
寺田裕一『データブック日本の私鉄』（改訂新版）
結解善幸『路線百科 東海道本線』
地理情報開発（編）「京阪電鉄大津線（京津線・石山坂本線）」『日本路面電車地図鑑』
京阪電気鉄道株式会社経営統括室経営政策担当 編『京阪百年のあゆみ』
京阪電気鉄道株式会社経営統括室経営政策担当 編『京阪百年のあゆみ 資料編』

隣の停留場

かつては上関寺駅も存在しました。また、官設鉄道時代の東海道本線では、馬場駅（現在の膳所駅付近）と山科駅（現在の京都市営地下鉄東西線小野駅付近）とを結んでいました。

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