大道寺政繁

大道寺政繁

大道寺政繁（だいどうじ まさしげ）は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将で、後北条氏の家臣として活躍しました。通称は大道寺駿河守、大道寺氏代々の通称である「孫九郎」を名乗りました。河越城および松井田城主を務めました。

生涯

大道寺氏は、後北条氏の中でも「御由緒家」と呼ばれる家柄で、代々北条氏の宿老として河越城を拠点に勢力を保っていました。政繁は、北条氏康・氏政・氏直の三代に仕え、特に氏政からは偏諱を賜り「政」の字を与えられたと言われています。

政繁は内政手腕に優れ、河越城代時代には城下の治水、金融商人の積極的な登用、掃除奉行や火元奉行の設置など、城下町の振興に尽力しました。天正12年（1584年）には新たに坂戸宿を開き、現在の坂戸市発展の礎を築きました。また、鎌倉代官として寺社の統括も行っていました。

軍事面では、「河越衆」と呼ばれる軍団を率い、三増峠の戦いや神流川の戦いなど、北条氏の主要な合戦に参戦し武功を挙げました。

天正10年（1582年）の武田氏滅亡後、北条氏は上野国を領有しましたが、本能寺の変により織田信長が死去すると、その混乱に乗じて上野国を奪還し、甲斐・信濃へ侵攻しました（天正壬午の乱）。政繁は信濃小諸城主として徳川家康と対峙しましたが、後に北条氏と家康の間で講和が成立し、信濃から撤退しました。

天正18年（1590年）の豊臣秀吉による小田原征伐では、上野松井田城の城代として、中山道の入り口である松井田で前田利家・上杉景勝・真田昌幸らの大軍を迎え撃ちました。しかし、兵力で劣る政繁は敗北し、籠城戦を余儀なくされました。圧倒的な豊臣軍の前に次々と郭を落とされ、開城降伏しました。

降伏後、政繁は豊臣方に加わり、忍城攻めの道案内や武蔵松山城、鉢形城、八王子城攻めなど、北条氏の拠点攻略戦に参加しました。特に八王子城攻めでは、城の搦手を教えたり、自身の軍勢を正面から突入させたりするなど、攻城戦に大きく貢献したとされています。

しかし、小田原城陥落後の7月19日、秀吉から北条氏政・氏照・松田憲秀らと共に開戦の責任を問われ、河越城下の常楽寺（河越館）にて切腹を命じられました。享年58歳。政繁の死により、大道寺氏は一時滅亡しました。

埼玉県川越市の常楽寺には供養塔が、群馬県安中市の補陀寺には墓が残されています。また、青森県弘前市の貞昌寺には、政繁の養子である大道寺直英（隼人）が建立した供養塔と直英の墓が並んで残っています。

逸話

天文15年（1546年）の河越城の戦いにおいて、まだ孫九郎と名乗っていた政繁が、上杉憲政の家臣・本間近江守との一騎打ちに勝利したという逸話が残っています。本間は剛の者として知られていましたが、政繁に敗れ、自身の馬印である「九つ提灯」を託して討たれました。その後、北条家の武将は本間にあやかって旗指物に提灯を差すようになったと言われています。

子孫

政繁の妻は遠山綱景の娘であり、最初の夫である舎人経忠との間に二人の男子を儲けましたが、経忠は戦死しました。その後、政繁に再嫁し、前夫との間の長男は政繁の養子となり大道寺直英と名乗りました。次男は津軽藩士松野家の養子となり、松野大学を名乗っています。その後、4人の異父弟が生まれました。

政繁の死後、家康の懇願により、政繁の子供たちは家康に預けられました。長男の大道寺直繁は徳川秀忠に仕え、その子孫は甲州流軍学者・大道寺友山を輩出しました。友山の子孫は福井藩士として存続し、家老職などを務めました。次男の大道寺直重は前田利政、後に尾張藩に仕え、子孫は尾張藩の城代家老を務める家柄となりました。三男は仏門に入り、弁誉と号し、深川本誓寺を中興しました。四男の大道寺直次は黒田孝高、豊臣秀次、福島正則、黒田長政、京極忠高に仕えた後、徳川秀忠に仕え幕府旗本となりました。養子の大道寺直英は尾張藩、後に弘前藩に仕え、弘前城築城に携わりました。子孫は津軽藩家老を務める家柄として存続しました。

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