大阪府立国際児童文学館

大阪府立国際児童文学館：児童文学研究の拠点

大阪府立国際児童文学館（IICLO）は、かつて大阪府吹田市の万博記念公園内に存在し、国内外の児童書や関連資料を幅広く収集・研究していた専門図書館でした。2009年12月27日に閉館し、その機能は大阪府立中央図書館国際児童文学館へと引き継がれました。

設立の背景と概要

1979年の国際児童年を記念する事業として計画され、滋賀県との誘致合戦の末、児童文学研究者・鳥越信氏からの貴重なコレクションの寄贈を受け、1984年5月5日に開館しました。その規模は国内最大級であり、児童文学研究における重要な拠点として機能しました。

特徴的なのは、児童文学だけでなく、漫画を含む広範な「子供の読み物」を研究対象としていた点です。約70万点に及ぶ資料の中には、少年・少女漫画や漫画雑誌も含まれており、研究者や愛好家からも高い評価を受けていました。2008年には、その功績が認められ、第12回手塚治虫文化賞特別賞を受賞しています。

施設とサービス

館内には、小学生以下を対象とした「こども室」が設けられ、約3万冊の図書や紙芝居が無料で貸し出されていました。中学生以上は閲覧室を利用でき、インターネットを通じた複写資料の請求やレファレンスサービスも提供されていました。

資料の収集と保存

開館以来、出版社からの寄贈を中心に、年間約2万点の資料が収集されていました。これは、納本制度のような義務に基づかない、民間の自発的な協力による資料寄贈としては、国内最大規模でした。収集対象は、児童文学、ライトノベル、絵本、紙芝居、漫画単行本・雑誌、関連する同人誌や研究書など多岐にわたりました。

資料の保存においては、刊行時の状態を可能な限り維持することを重視し、一般的な図書館で行われる補強やバーコード貼付、製本作業は行いませんでした。雑誌の付録や表紙、帯なども可能な限り保存し、資料の価値を最大限に尊重していました。

事業と活動

日産自動車と共同で「ニッサン童話と絵本のグランプリ」を開催し、児童文学の新人育成に貢献しました。また、国際グリム賞を創設し、児童文学研究の分野で優れた業績を上げた研究者を表彰しました。

閉館とその後

2008年、大阪府の財政再建の中で、国際児童文学館の移転案が浮上しました。府は、中央図書館への移転が府民利用の向上につながると主張しましたが、文学館側や研究者、作家などからは反対意見が相次ぎました。しかし、最終的には府の方針が決定し、2009年12月27日に閉館、資料は中央図書館に移管されました。

この移転を巡っては、資料の寄贈者である鳥越信氏らが資料の返還を求めて訴訟を起こしましたが、最終的に敗訴が確定しました。

2010年5月、大阪府立中央図書館国際児童文学館として再出発し、現在も児童文学に関する資料の収集・公開、調査研究が行われています。

現在

2023年2月には、大阪府は万博記念公園内の旧文学館の事務所を移転させる方針を固めました。長らく活用されていなかった土地の活用が期待されています。

大阪府立国際児童文学館は、その短い歴史の中で、日本の児童文学研究において重要な役割を果たしました。その精神は、大阪府立中央図書館国際児童文学館に引き継がれ、今後も児童文学の発展に貢献していくことでしょう。

もう一度検索