天徳寺 (水戸市)

天徳寺（てんとくじ）

天徳寺は、茨城県水戸市に位置する曹洞宗の寺院であり、岱宗山（たいそうざん）という山号を冠しています。本尊は十一面観世音菩薩です。

歴史

天徳寺の創建については、文禄2年（1593年）8月に佐竹義憲によって創建され、慶長3年（1598年）に盛庵全昌によって開山されたとする説と、当初は太田にあったものが文禄2年に円通寺跡に移されたという説が存在します。その後、現在の祇園寺（水戸市八幡町）の地に移りました。慶長7年（1602年）には、徳川家康から50石の朱印地を附されています。

寛文5年（1665年）に堯翁恕学が没した後、寺運は一時衰退しましたが、徳川光圀が月坡道印を住持として招聘し、復興に尽力しました。月坡が天徳寺を離れた後、天和3年（1683年）に光圀によって招かれた東皐心越は、元禄8年（1695年）に没するまで天徳寺の住持を務め、曹洞宗の一派である寿昌派の教えを広めました。元禄4年（1691年）には、光圀の命により伽藍が「唐風」に改築され、元禄5年（1692年）に晋山開堂が行われた際には、全国から1700人もの雲衲が集まったと伝えられています。また、三世・蘭山道昶は光圀の命で韻書「洪武聚分韻」の編纂に関わるなど、寺と光圀とは深い繋がりがありました。

正徳2年（1712年）、四世・大寂界仙の時代に「天徳寺」の寺籍は河和田村（現・水戸市河和田町）へ移され、元の天徳寺は祇園寺と寺号を改めて曹洞宗寿昌派の本山寺院となりましたが、数代でその法灯も途絶えました。

江戸時代後期に火災で焼失しましたが、文久2年（1862年）に本堂と庫裏が再建され、現在に至っています。幕末には「水戸八景」に因んだ「河和田八景」の一つ（天徳寺晩鐘）に選ばれ、1950年（昭和25年）には茨城県観光審議会が選定した『茨城百景』のひとつとして、天徳寺を含んだ「水戸城西ハイキンゲコース」が選定されています。

文化財

寺宝として、延享3年（1746年）ごろに作成された「大般若経」と、山岡鉄舟による山号額を有しています。天徳寺がある場所は、かつての河和田城の跡地であり、周辺の報仏寺や河和田小学校も城跡に位置しています。昭和30年代に行われた調査によれば、本堂を囲むように北西から南にかけて幾重にも土塁や空堀が現存しており、本堂近くの土塁は上部が削られて墓地として利用されています。そのため正確な規模は判然としませんが、それでも基底巾3～5メートル、高さ1.5～3.5メートルとされ、規模の大きなものでは基底巾8～15メートル、高さ3メートル、上部巾3～10メートルほどのものもあります。また、東側の山門の東西にもそれぞれ80センチから1.2メートルの高さの土塁が残っていました。現在も残る土塁や堀などの遺構は、水戸市の文化財に指定されています。

参考文献

水戸市史編さん委員会 編『水戸市史 上巻』水戸市役所、1963年
水戸市史編さん委員会 編『水戸市史 中巻（一）』水戸市役所、1968年
全日本仏教会・寺院名鑑刊行会 編・発行『全国寺院名鑑』、1969年3月1日
下中邦彦編・発行『日本歴史地名大系 第八巻 茨城県の地名』平凡社、1982年11月4日

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