天明太郎

映画『天明太郎』解説

『天明太郎』は、1949年（昭和24年）にNHKラジオ第1放送で人気を博したラジオドラマを原作とした映画作品です。1951年（昭和26年）に池田忠雄監督によって映画化され、同年4月27日に公開されました。

ラジオドラマ版は、当時の人気作家・文学者たちがリレー形式で脚本を執筆するという、非常にユニークなスタイルで制作されました。石坂洋次郎、林房雄、徳川夢声、宮内寒弥、村松梢風、尾崎一雄、佐々木邦、坂口安吾といった、そうそうたるメンバーが名を連ねています。

あらすじ

主人公は天明太郎（佐野周二）。大学卒業後、静岡の女学校に職を得ますが、女生徒・緑川フミ子（月丘夢路）との噂が立ち、学校を辞めて東京へ戻ります。その後、出版社「婦人評論社」に転職し、同僚の染井京子（幾野道子）から好意を寄せられます。

仕事を通じて「自由文化同盟」会長の小笹五郎（河村黎吉）や、「ミス・銀座」に選ばれた女性にインタビューをすることになりますが、なんと「ミス・銀座」はフミ子だったのです。「婦人評論社」を辞めた太郎は、インタビューの縁で「自由文化同盟」に転職するも、小笹会長がフミ子を狙っていることを知り、ここも退職してしまいます。

職を転々とする太郎に、伯父は家の財産が底をつきかけていること、そして母（飯田蝶子）が苦労していることを告げます。反省した太郎は、「自由文化同盟」に戻ることを決意し、フミ子に小笹との仲介を頼みます。その際、太郎はフミ子がまだ自分に好意を抱いていることを知るのでした。

太郎とフミ子は結婚し、太郎は再び静岡の女学校の教師として働き始めるという結末を迎えます。

キャスト

天明太郎：佐野周二
母：飯田蝶子
緑川フミ子：月丘夢路
染井京子：幾野道子
小笹五郎：河村黎吉

スタッフ

製作：白井和夫
監督：池田忠雄
脚本：斎藤良輔、中村定郎
原作：石坂洋次郎、林房雄、徳川夢声、宮内寒弥、村松梢風、尾崎一雄、佐々木邦、坂口安吾
撮影：厚田雄春
音楽：万城目正

作品データ

製作：松竹大船撮影所
上映時間：70分
公開日：1951年4月27日
* 配給：松竹

映画の特徴

映画『天明太郎』は、戦後の世相を背景に、青年の恋愛模様と成長をコミカルに描いた作品です。豪華作家陣による原作の面白さを活かしつつ、池田忠雄監督ならではのユーモアあふれる演出が光ります。佐野周二、月丘夢路といった実力派俳優たちの演技も見どころです。

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