天然痘ウイルス

天然痘ウイルスについて

天然痘ウイルス（Variola virus）は、ポックスウイルス科に属する二本鎖DNAウイルスであり、天然痘という病気の原因となります。このウイルスは人にしか感染せず、1977年を最後に自然界から姿を消しました。1980年には世界保健機関（WHO）によって天然痘の根絶が宣言され、これにより人類は病原体の完全根絶に成功した初めてのケースとなりました。

概要

天然痘ウイルスの構造は煉瓦形のエンベロープを持ち、サイズは長径302から350ナノメートル、短径244から270ナノメートルに及びます。一般的なウイルスと比べて大型で、特に2本鎖のDNAを含むカプシドを持っており、合計18万5578塩基対と187個の遺伝子を格納しています。遺伝子的には牛痘ウイルスやワクチニアウイルスと密接に関連しており、初期の天然痘ワクチンも牛痘ウイルスを利用して開発されました。

このウイルスは乾燥や低温に対して強い耐性を持つ一方で、アルコールやホルマリン、紫外線に対しては脆弱です。

感染経路と症状

天然痘ウイルスの感染は主に飛沫感染によって広がり、感染者の体液や飛沫が口や鼻、喉に入ることで発症します。また、感染者が使用した衣類や寝具に触れても感染することがあります。潜伏期間は約12日から16日であり、その後39度前後の高熱が現れ、頭痛や関節痛が続くのが特徴です。発疹は顔や頭部から始まり、全身に拡がります。発疹は水痘とは異なり凹みがあり、最初に口の中に現れることもあります。全身の発疹は治癒後変色や瘢痕を残すことがあり、これが後遺症として知られています。

天然痘ウイルスはVariola majorとVariola minorの二つの型に分類され、前者は致死率が20%から50%に達する高い毒性を持つ一方、後者は1%未満の致死率です。20世紀には、この病気によって3億から5億人が命を落としたとの統計があります。

歴史と根絶の経緯

天然痘は紀元前10000年頃から存在していたとされ、古代エジプトのミイラからも痕跡が見つかっています。1958年、WHOは天然痘根絶計画を採択し、集団免疫を目指して種痘を実施しました。最終的に1977年にソマリアで最後の感染者が確認され、その後、1979年12月と1980年5月に撲滅が宣言されました。

なお、1978年にバーミンガム大学のインシデントにより、和夫女性が感染し死亡したことが、このウイルスへの管理の厳格化を促しました。現在、天然痘ウイルスはアメリカ疾病予防管理センターとロシアの研究施設にのみ保存されており、廃棄についての議論が続いています。

ワクチンの開発

天然痘は最初に成功したワクチンが開発された感染症とされています。1796年、エドワード・ジェンナーが牛痘ウイルスを用いた種痘法を確立しました。これは、近縁のウイルスを使ったワクチン接種法であり、効果を上げ、安全性も高いものでした。中国では既に10世紀から人痘法が行われていましたが、これは天然痘ウイルスそのものを使って免疫を獲得する方法でした。種痘の発展により、大きな成果が得られ、最終的には天然痘の撲滅につながっていきます。

このように、天然痘ウイルスはその歴史や特性を学校教育などで学び続けるべき重要なテーマです。人類が直面し、克服した病気として記憶されるべきでしょう。

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