天谷直次郎

天谷直次郎

天谷直次郎（あまや なおじろう）は、明治から昭和にかけて活躍した大日本帝国陸軍の軍人です。1888年（明治21年）6月12日に福井県で生を受け、1966年（昭和41年）11月30日にその生涯を閉じました。最終階級は陸軍中将にまで進み、その功績により功二級を授与されています。

軍人としてのキャリアを歩み始めた天谷は、陸軍士官学校に進学し、第21期生として卒業。さらに高度な軍事知識を習得するため、陸軍大学校で学び、第31期を修了しています。これらの教育課程を通じて、部隊指揮官としての基礎と、戦略・戦術に関する深い理解を培いました。

初級将校時代を経て、中佐、大佐へと昇進するにつれて、重要な役職を歴任するようになります。1932年（昭和7年）には独立守備歩兵第2大隊長として部隊を指揮。翌1933年（昭和8年）8月には陸軍歩兵大佐への昇進を果たし、同時に宇都宮連隊区司令官に任じられました。この間、兵員の徴募や管理、教育といった後方支援部門での経験を積みました。さらに1935年（昭和10年）には、歩兵第42連隊長として、再び実戦部隊の指揮官を務め、その練度向上に尽力しました。

将官への昇進は、日中戦争が本格化する直前の1937年（昭和12年）8月でした。陸軍少将に進級した天谷は、歩兵第10旅団長に就任し、より大規模な部隊の指揮を任されます。翌1938年（昭和13年）には、教育畑へと転じ、仙台陸軍教導学校長として、将来を担う下級将校や兵員の育成に携わりました。

軍歴における大きな転換期となったのは、1939年（昭和14年）10月2日です。この日、陸軍中将に昇進すると同時に、第40師団長に親補されました。師団長として、天谷中将は日中戦争の戦線に赴き、主に中国大陸中部での治安維持活動を担当しました。しかし、師団は単なる駐屯任務に留まらず、日本軍が進攻した宜昌作戦、予南作戦、そして大規模な長沙作戦といった重要な攻勢作戦にも参加。天谷中将の指揮のもと、師団はこれらの作戦において一定の戦果を挙げたと記録されています。厳しい戦況下で、師団を率いて任務を遂行する手腕が問われました。

しかし、前線での指揮は長く続きませんでした。1941年（昭和16年）8月25日、天谷中将は参謀本部附となり、実戦部隊の指揮官の地位から離れます。その後、同年10月15日には待命となり、12月2日には予備役に編入されました。これは太平洋戦争が勃発する直前の出来事であり、彼の現役軍人としてのキャリアはここで幕を閉じました。

第二次世界大戦が終結し、日本の占領統治が始まると、天谷直次郎もまたその影響を受けることになります。GHQ（連合国軍総司令部）による公職追放の対象と見なされ、1947年（昭和22年）11月28日には公職追放の仮指定を受けました。これにより、一時的に公的な活動から遠ざけられることとなりました。

私生活においては、息子にエコノミストとして著名な天谷直弘氏がおり、さらに孫には天谷直昭氏がいます。

軍人としての功労に対し、天谷直次郎は国家から栄典を授与されています。特に1939年（昭和14年）11月13日には、勲二等瑞宝章を受章しており、その功績が認められた証と言えます。

天谷直次郎は、明治から昭和にかけての激動期に陸軍将官としてキャリアを重ね、様々な部隊や機関で任務を遂行しました。彼の経歴は、当時の日本の軍事組織や、日中戦争における日本軍の活動の一端を示す貴重な記録となっています。

本記事の作成にあたっては、主に以下の文献を参考にしました。

福川秀樹 編著『日本陸軍将官辞典』芙蓉書房出版、2001年。ISBN 4829502738。
外山操 編『陸海軍将官人事総覧 陸軍篇』芙蓉書房出版、1981年。ISBN 4829500026。

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