天険親不知線

天険親不知線（てんけんおやしらずせん）

新潟県糸魚川市に位置する天険親不知線は、親不知の断崖を縫うように作られた全長1kmの市道です。かつては国道8号の旧道でしたが、現在は「親不知コミュニティロード」という愛称で親しまれ、主に観光客向けの遊歩道として利用されています。自動車の通行はできません。

歴史

天険親不知線が建設される以前、この地は北陸道最大の難所でした。海岸沿いの道は高波で危険なため、人々は山越えの悪路を通るしかありませんでした。この状況を大きく変えたのが、明治天皇の北陸巡幸です。1878年、明治天皇一行が親不知を通過する際、安全を考慮して山道を選んだことが、安全な新道建設の機運を高めるきっかけとなりました。

1880年、新潟県会で新道開発が議決され、1882年に工事が開始されました。当時の技術では、断崖絶壁での作業は困難を極め、多大な費用と労力が費やされました。1883年、ついに国道が開通し、日本海側の東西を結ぶ幹線道路が完成しました。この道路の完成は、人々の往来を大きく変え、地域の発展に貢献しました。

道路の完成を記念して、巨大な岩盤には「如砥如矢」という文字が刻まれました。これは、「砥石のように平らで、矢のように真っ直ぐな道である」という道路への称賛を表しています。

その後も道路の改良は続けられましたが、モータリゼーションの進展に伴い、1966年に国道8号天険トンネルが開通しました。これにより、天険親不知線は国道としての役割を終え、翌年には旧青海町へ移管され、現在は観光遊歩道として活用されています。

1986年には「日本の道100選」に選定されたことを記念して、道路の保存・保全が行われるとともに、展望台などの施設が整備されました。

見どころ

天険親不知線からは、日本海の雄大な景色を一望できます。晴れた日には、佐渡島や能登半島まで見渡せることもあります。また、展望台の脇には、親不知を訪れたイギリス人登山家ウォルター・ウェストンの座像が設置されており、毎年5月には地元有志による海のウェストン祭が開催されています。

親不知・子不知という地名は、古来より交通の難所として知られてきました。この場所からは、断崖下の砂浜に打ち寄せる波、国道8号、北陸自動車道の海上高架橋、そして日本初の海上インターチェンジである親不知インターチェンジを同時に眺めることができます。

さらに、遊歩道は土木学会選奨土木遺産にも選ばれている「旧親不知トンネル」（親不知レンガトンネル）とも繋がっており、歴史を感じながら散策を楽しめます。

アクセス

天険親不知線は、道路の両端が国道8号に接続しています。途中に他の道路はなく、東西両端は糸魚川市市振に位置し、それぞれ天険トンネルの東西坑口付近にあります。

まとめ

天険親不知線は、日本の歴史と自然が織りなす美しい風景を楽しめる場所です。かつての難所を克服し、人々の生活を支えた道路は、今もなお多くの人を魅了しています。歴史と絶景を堪能できるこの場所は、訪れる価値のあるスポットと言えるでしょう。

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