天願

沖縄県うるま市天願の歴史と文化

天願（てんがん）は、沖縄県うるま市に位置する地域で、かつては「てくらん」とも呼ばれていました。この地は、豊かな自然と歴史、そして独特の文化が息づく場所です。

地理と変遷

うるま市（旧具志川市）のほぼ中央に位置する天願は、古くからの田園集落で、大正時代には沖縄八景の一つに数えられた天願川の流域に広がっていました。しかし、1956年に米軍基地キャンプ・コートニーが設置され、その大部分が基地に占有されることになりました。

基地建設のため、土地は強制的に接収され、多くの住民が住む場所を失いました。その後、1961年には米陸軍の通信基地「天願通信所」も設置され、残された地域は人口が密集し、生活は困難を極めました。1983年に天願通信所の土地が全面返還された後、土地区画整理事業が行われ、新たに「みどり町」が誕生しました。天願は、具志川間切、具志川村、具志川市を経て、2005年からはうるま市の一部となっています。なお、米軍の港湾基地である天願桟橋は、実際にはうるま市昆布区に位置しています。

小字

天願は、かつて26の小字で構成されていました。1911年の沖縄県令達類纂によると、前門口原、前原、天願原などがありましたが、その後の分離や区画整理事業により、現在の小字は14となっています。

現存する14の小字は以下の通りです。

茶木根原（チャーギンニー）
赤田地原（アカタジバル）
東津堅原（アガリチキンバル）
西津堅原（イリチキンバル）
天願原（ティングヮンバル/ムラウチ）
大神迫原（オーカミジャクバル）
町原（マチバル）
水玉栄原（ミンタマヤーバル）
霊化原（リーカバル）
後原（クシバル）
石根原（イシンニバル）
前原（メーバル）
前門口原（メージョーグチバル）※土地区画整理事業により消滅
兼久原（カニクバル）※土地区画整理事業により消滅


これらの小字は、それぞれ歴史的な背景や地理的な特徴を持ち、天願の地域性を形作る上で重要な要素となっています。

文化

天願では、伝統的な文化が今も大切に受け継がれています。特に有名なのは、天願獅子舞です。この獅子舞は、琉球王国時代に首里から伝わったとされ、毎年旧暦の7月16日には、天願太郎治の神殿前と祝女殿内の神殿前で勇壮に舞われます。獅子舞は、獅子あやしによって導かれ、三味線、太鼓、笛、ホラ貝などの伴奏に合わせて踊られます。

史跡

天願には、いくつかの重要な史跡があります。天願城（ツチグスク）、天願貝塚、霊化森グスクは、現在米軍基地内に位置しており、調査や保全が十分に行われていません。

天願城（ツチグスク）：琉球時代の城跡で、標高35メートルの石灰岩丘上にあります。安慶名大川按司の子息によって築城されたとされ、後天願按司が城主を務めたと伝えられています。
天願貝塚：沖縄貝塚時代前期の貝塚で、1904年に鳥居龍蔵によって発見されました。奄美系土器や伊波式土器、磨製石斧などが採集されています。
霊化森グスク：戦前は木々が生い茂る森林でしたが、戦時中に伐採されました。中腹には洞窟があり、火の神や霊石が祀られています。
天願馬場：琉球王朝時代に設けられた競馬場で、戦前には馬ハラセーが行われていました。
旧天願橋：1934年に建設された二重橋で、南沖縄八景にも選ばれました。しかし、1945年に日本軍によって爆破されました。

ゆかりのある人物

天願には、多くの著名な人物がいます。

神村吉郎：琉球砂糖創業者、沖縄県議会議員、帝国議会衆議院議員
神村孝太郎：琉球政府第3代副主席、琉球電電公社初代総裁
島袋俊夫：うるま市第2代市長、うるま市・具志川市議会議員
天願太郎治：天願按司の子息で弓の名手、霊化森に居を構えたと伝えられる。

また、平良家、池原家、神村家は、それぞれ地域の有力な一族として知られています。特に神村家は、代々地頭代を務めた大地主であり、多くの人材を輩出しています。

題材となった作品

組踊（歌劇）『久志の若按司』は、天願を舞台とした作品です。

関連情報

天願川
天願城
旧天願橋（ターチー橋）
天願太郎治の馬つなぎ岩
祝女殿内（ヌンドゥンチ）
* 天願桟橋


天願は、豊かな自然と歴史、文化が融合した地域です。米軍基地の設置により、その姿は大きく変わりましたが、今もなお、多くの人々に愛され、その歴史と文化は大切に受け継がれています。

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