天龍三郎 (浪曲師)

天龍三郎の生涯と業績

天龍三郎（てんりゅう さぶろう）は、1915年5月11日に大阪府大阪市で生まれました。彼の本名は阪口春千代（さかぐちはるちよ）で、浪曲界において長いキャリアを持つ浪曲師として知られています。彼の人生は波乱万丈であったものの、音楽への情熱は常に彼の道を照らしていました。

家族とデビューへの道

天龍は大阪市の玉造に生まれ、大家族の一員として育ちました。彼には8人から9人の兄弟がいたとされ、そのため彼の生地は戦争による書類の焼失によって不明となっています。芸能一家に生まれた彼は、父が初代広沢菊春、母が浪曲の曲師広沢小富であり、兄も2代目菊春という影響力のある家族に恵まれていました。このような環境からも自然と芸能に触れる機会が多く、幼少期から文化的な影響を受けて育ちました。

小学校へは途中まで通いましたが、他の場所での奉公生活は長続きせず、最終的には寄席の手伝いに転向しました。当初は浪曲師を目指すことは考えておらず、映画の技師やジャズのドラマーを志望していました。しかし、運命的な出会いが彼の人生を変えることになります。

1929年、父が一座を組み巡業に出た際、浪曲界の大物である二代目吉田奈良丸から弟子入りの誘いを受けましたが、彼は梅中軒鶯童に入門します。元々浪曲師にするつもりはなく、あまり真剣に稽古をしなかったものの、その年の「桂川力道」で彼の初舞台が実現しました。

兵役と改名

しかし、後の病気や兵役生活を経て、彼は鉄腕のジャズドラマーになる夢を断念します。1940年にはレコードの販売が開始され、その際に名前の紛らわしさから一般公募で新しい名前が求められました。彼は、相撲の天竜三郎からインスパイアを受け、天竜三郎（のちの天龍三郎）と改名しました。

第二次世界大戦中は、慰問団を結成して活動を続けました。戦後は中座での帰還披露大会が話題を呼び、彼の名声はさらに高まりました。

音楽活動と指導

戦後の彼は、曲師である藤信初子とのパートナーシップを活かし、全国の刑務所や老人ホームの慰問に出かけました。また、千日劇場での出演やテレビ、ラジオでの活動を通じて、多くの楽しみを提供しました。彼の音源はレコードやカセットテープとして多数残されており、後世にわたって影響を与え続けています。

特に、関西テレビが開局し行われた「てんぐ浪曲のど自慢」という番組の審査員として約5年の間活躍したことも知られています。彼の得意とするネタには、師匠譲りの「吃又」や「紀文」などがあり、浪曲の魅力を多くの人に伝えました。

晩年と死去

晩年には後進の指導に力を入れ、一心寺での出演も活発に行いました。特に、大阪近鉄バファローズの熱烈なファンであったことでも知られています。2014年3月26日、解離性大動脈瘤により、彼は98歳でその生涯を閉じました。彼の死去は多くの人々に衝撃を与え、浪曲界を代表する存在として、その功績は今も色あせることはありません。

受賞歴

1948年には、NHK第1回新人コンクールで一位に輝き、その才能と努力は評価されています。天龍三郎という名前は、今なお浪曲界に名を刻みつつ、後世の人々に影響を与え続けています。

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