太宰治記念館 「斜陽館」

太宰治記念館「斜陽館」：近代和風建築と文学の融合

青森県五所川原市に位置する「太宰治記念館『斜陽館』」は、小説家太宰治の生家であり、近代和風建築の傑作として知られています。2004年には国の重要文化財に指定され、歴史的・文化的価値の高さが認められています。

明治期の豪農の邸宅

1907年（明治40年）、太宰治の父である津島源右衛門によって建てられたこの建物は、当時、青森県北津軽郡金木村にありました。広大な敷地には、主屋に加え、文庫蔵、中の蔵、米蔵などの土蔵や、煉瓦塀が当時のまま保存されています。青森県産材であるヒバをふんだんに使用した木造2階建てで、延べ床面積は約400坪にも及ぶ壮大な邸宅でした。

太宰治の生涯と斜陽館

太宰治は、中学進学を機に1923年（大正12年）に青森市へ転居するまで、この家で暮らしました。その後、東京で活動する中で、さまざまな困難を経験し、郷里から勘当される時期もありましたが、1942年（昭和17年）に母親が亡くなった後に許され、再びこの地に戻ってきます。戦況の悪化に伴い、1945年（昭和20年）には妻子と共に疎開しますが、翌年までこの家で過ごしながら文筆活動を続けました。彼の代表作『思ひ出』や『津軽』には、この斜陽館での生活や思い出が反映されているとされています。

旅館から記念館へ

太宰の死後、津島家は1950年（昭和25年）に斜陽館を売却。町内の旅館経営者が買い取り、太宰治文学記念館を併設した旅館として「斜陽館」と名付け、営業を開始しました。多くの太宰ファンが宿泊に訪れ、にぎわいを見せました。1967年には、太宰治の妻をモデルにした映画『斜陽のおもかげ』の撮影も行われ、斜陽館はその舞台として使われました。

しかし、時代とともに宿泊客は減少。経営難から、1996年（平成8年）に金木町（当時）が買い取り、町営の文学記念館として再出発することになりました。旅館としての営業は終了し、1998年（平成10年）に現在の「太宰治記念館『斜陽館』」として改装オープン。現在は宿泊施設ではなく、太宰治の文学資料や津島家の貴重な資料を展示する資料館として、多くの観光客や文学ファンが訪れています。

建築様式と文化財としての価値

斜陽館は、設計を堀江佐吉が担当し、津軽地方の伝統的な町屋の形式を踏襲しながらも、洋風の意匠を取り入れた和洋折衷建築となっています。内部には洋風の応接室や階段室などがあり、屋根構造はトラス構造を採用するなど、独自の建築技術が見られます。敷地内には、主屋以外にも、文庫蔵、中の蔵、米蔵といった土蔵や、長大な煉瓦塀が残り、当時の屋敷構えをほぼ完全な形で残している点が評価されています。これらの建物と敷地は、2004年（平成16年）に国の重要文化財に指定されました。

アクセスと情報

津軽鉄道線金木駅より徒歩約7分、または弘南バス小泊線「斜陽館前」下車すぐの場所に位置しています。館内には太宰治に関する貴重な資料が数多く展示されており、彼の生涯や作品世界を深く理解できる施設となっています。太宰治ファンはもちろん、近代和風建築や歴史に興味のある方にもおすすめです。

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