太東海浜植物群落

太東海浜植物群落について

太東海浜植物群落は、千葉県いすみ市岬町和泉に位置する、国の天然記念物に指定されている海浜植物の群生地です。九十九里浜の南端、太東岬の南、夷隅川の河口北に広がり、南房総国定公園の一部を形成しています。その面積は約6526平方メートルです。

この群落は、1920年に日本で最初に天然記念物に指定された場所の一つで、その基準は「海岸及び沙地植物群落の代表的なもの」とされています。イソギクやスカシユリをはじめとする約20種類の海浜特有の植物が群生しており、かつてはさらに多様な植物が生息していました。

群落の歴史と変遷

1920年の指定当初、この地にはケカモノハシ、オニシバ、ハマニンニクなど30種類以上の海浜植物が群生し、天然の防風林としての役割も果たしていました。生物学者たちからも高く評価されていましたが、大正時代末期以降、地盤沈下や海食により海岸線が後退し、群落の大部分が失われました。

海食を防ぐための護岸工事により、砂浜は消失し、群落は護岸の内側に柵で囲まれ、海とは完全に分断されました。しかし、その内部では、イソギク、ハチジョウススキ、スカシユリ、ハマヒルガオ、ハマエンドウなどの草本群落が今もなお見られます。特に、スカシユリやハマヒルガオは6月に美しい花を咲かせ、秋から初冬にかけてはイソギクが群生します。

一方で、護岸工事や人間の活動の影響で、ヒメムカシヨモギ、セイタカアワダチソウなどの帰化植物も侵入しています。群落の外側には、1979年に石碑が建てられました。

低木林の形成

草本群落の奥には、砂丘の上に低木林が形成されています。かつてはクロマツ林が発達していましたが、それが枯れた後に、その下に生息していた低木が成長し、現在の林となりました。このような砂丘に自然に成立した海岸林は、日本全国でも珍しいとされています。

この低木林は、海岸から奥に進むにつれて樹高が高くなります。林の後方部では、ヤブニッケイやタブノキが高さ5メートル程度まで成長しているのに対し、海岸最前部では、マサキ、トベラ、マルバグミなどの常緑低木が主に群生しています。潮風の影響を強く受ける海岸最前部の樹木は低木を形成し、高さも1メートルに満たないことが多いです。特に、トベラ、ヤブニッケイ、ヤブツバキなどが密生している場所は、暗くなっています。その他、オニヤブソテツ、ツワブキなども生育しています。

動物と環境

初夏には、群落の南側の夷隅川河口付近の砂浜に、絶滅危惧種であるコアジサシが飛来し、繁殖を行います。しかし、繁殖地だと知らずに人が立ち入ることで、繁殖に悪影響を及ぼすことが懸念されています。

アクセス

所在地：千葉県いすみ市岬町和泉4363他

交通手段：
JR外房線太東駅下車、徒歩30分から1時間弱
国道128号下り「太東灯台入口」信号を海側へ左折、そのまま海岸まで道なり約5分

まとめ

太東海浜植物群落は、貴重な海浜植物の生態系を今に伝える場所です。歴史的な変遷を経て、その姿は変化してきましたが、自然の力と人の手が交錯する中で、この場所は今後も保全されていく必要があります。

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