太田川駅

名鉄太田川駅

愛知県東海市大田町に所在する名古屋鉄道の太田川駅（駅番号：TA09）は、知多半島へと続く常滑線と河和線が分岐する要衝であり、東海市の玄関口としての役割を担っています。

近代的な高架駅へ

当駅は、2003年（平成15年）3月から約8年半に及ぶ大規模な連続立体交差事業を経て、2011年（平成23年）12月17日に新たな姿に生まれ変わりました。名鉄では初めてとなる、コンコース、2階ホーム、3階ホームの3層構造を持つ高架駅となり、駅南側にあった「開かずの踏切」をはじめ、計6箇所の踏切が解消されました。これにより、都市交通の円滑化が図られるとともに、中部国際空港方面と河和線方面からの列車の平面交差がなくなり、安全性の向上にも大きく貢献しています。

特徴的な構造と設備

新駅舎は、1階に自動券売機、改札口、駅事務所、多目的トイレ、売店などを備えたコンコースが配置されています。ホームは合計3面6線で、2階には1番線から4番線までの2面4線（主に常滑線 金山・名古屋方面など）、3階には5番線と6番線からなる1面2線（主に河和線 金山・名古屋方面など）が設けられています。2階と3階のホーム間には中3階の連絡通路が設けられており、各ホームへの移動をスムーズにしています。

すべてのホームには車椅子対応のエレベーターとエスカレーターが完備されており、特に2階の金山・名古屋方面ホーム（3・4番線）と3階の同じく金山・名古屋方面ホーム（5・6番線）は、乗り換えの利便性を考慮してエスカレーターで直接結ばれています。発車標はフルカラー対応となり、特に上りホームでは到着列車のホーム階や金山駅での先着案内なども表示されるようになりました。また、列車組成に対応した停止位置目標も設置されています。

高架化事業に伴い、駅東側には新たな駅前広場が整備され、2012年（平成24年）3月からは路線バスの乗り場もそちらに移転しました。駅南側には、当駅を始終着とする列車の留置に用いられる留置線が2本設けられています。

歴史と駅名改称騒動

太田川駅の歴史は古く、1912年（明治45年）2月18日に愛知電気鉄道によって「大田川駅」として開業しました。当初は現在の東海市の地名と同様に「大田川」と点のない表記でした。1924年（大正13年）には、近隣にある弥勒寺の宝塔を模した特徴的なデザインの駅舎が建設され、これは1986年（昭和61年）の改築時にもその意匠が引き継がれましたが、高架化工事に伴い2009年（平成21年）に解体されました。駅名は1930年（昭和5年）から1931年（昭和6年）にかけて、現在の「太田川駅」に改称されています。

1935年（昭和10年）には愛知電気鉄道が名岐鉄道と合併し名古屋鉄道の駅となり、1943年（昭和18年）には接続していた知多鉄道も名鉄に統合されました。かつては駅に隣接して太田川検車区がありましたが、これは犬山検査場の完成に伴い1985年（昭和60年）に廃止されています。

高架化工事の以前には、駅名の変更が検討された時期もありました。2005年（平成17年）の空港線開業に伴うダイヤ改正時に、東海市側から「東海駅」などへの改称が要望されました。アンケートでは現状維持を望む声が多かったものの、駅名変更検討委員会は改称を答申しましたが、地元住民の強い反対運動を受け、最終的に改称は見送られました。

列車運行と利用状況

当駅は特急停車駅であり、ミュースカイの一部列車も停車します。常滑線・中部国際空港方面からの列車と河和線からの列車は、名古屋方面に向かう場合、それぞれ異なる階のホームから発着します。このため、両路線間の乗り換えにはホーム間の移動が必要となります。平日朝ラッシュ時には、当駅でのスムーズな乗り換え・緩急接続を補完するため、一部の快速急行や急行が隣の聚楽園駅に特別停車する措置がとられています。

利用状況を見ると、当駅は名鉄の中でも有数の主要駅であり、特に河和線においては最も利用客が多い駅です。常滑線・空港線全体でも、神宮前駅に次ぐ利用者数を誇り、東海市の代表駅としての役割を数字の上でも示しています。

駅周辺

駅周辺の住所および地区名は「大田町」であり、駅名の「太田川」とは異なり、「田」の字に点が付かないのが特徴です。駅の東側には再開発により建設された商業施設「ラスパ太田川」や「ソラト太田川」、東海市芸術劇場などが入る複合施設「ユウナル東海」などが整備され、駅周辺は大きく変貌を遂げました。東海市役所や日本福祉大学東海キャンパスなども近隣に位置しており、行政、教育、商業の中心地となっています。また、駅前広場からは知多バスや東海市循環バス「らんらんバス」に加え、高速バスも発着しており、交通結節点としての機能も強化されています。

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