奇想コレクション

「奇想コレクション」（きそうコレクション）は、2003年から2013年にかけて、日本の出版社である河出書房新社が刊行した叢書シリーズです。SF、ファンタジー、ミステリーといった多様なジャンルから、世界各国の作家による短編作品を選りすぐり、日本で独自に編集・編纂したオリジナルの短編集として刊行されました。全20冊で完結しています。

本シリーズ全体の企画は、長年にわたり海外SF作品の翻訳を手掛けてきたSF翻訳家の中村融が担当しました。個性的なセレクションと編集方針により、海外文学の多様な魅力を伝える試みとなりました。

書籍の装丁にも特徴があり、一般的な四六判よりやや大きい四六判変形という判型が採用されています。視覚的なデザインも凝っており、カバー画は松尾たいこが全巻にわたり手掛け、独特の世界観を表現しました。また、造本設計は阿部聡、ブックデザインはデザイン集団コズフィッシュの祖父江慎と安藤智良が担当し、書籍自体が一つのアート作品のような趣を持っています。

全20冊のラインナップは以下の通りです。SF界の巨匠から、ファンタジー、ホラー、ミステリーなど様々な分野の異才まで、幅広い作家が選ばれています。一部の巻は、後に河出文庫として再刊され、より多くの読者に届けられました。

第一期
ダン・シモンズ　『夜更けのエントロピー』（2003年）
シオドア・スタージョン　『不思議のひと触れ』（2003年）- のち河出文庫
テリー・ビッスン　『ふたりジャネット』（2004年）
エドモンド・ハミルトン　『フェッセンデンの宇宙』（2004年）- のち河出文庫
アルフレッド・ベスター　『願い星、叶い星』（2004年）- のち『イヴのいないアダム』として創元SF文庫
シオドア・スタージョン　『輝く断片』（2005年）- のち河出文庫
アヴラム・ディヴィッドスン　『どんがらがん』（2005年）- のち河出文庫
ゼナ・ヘンダースン　『ページをめくれば』（2006年）

第二期
ウィル・セルフ　『元気なぼくらの元気なおもちゃ』（2006年）
コニー・ウィリス　『最後のウィネベーゴ』（2006年）- のち河出文庫
パトリック・マグラア　『失われた探険家』（2007年）
タニス・リー　『悪魔の薔薇』（2007年）
シオドア・スタージョン　『[ウィジェット]と[ワジェット]とボフ』（2007年）- のち河出文庫
ジョン・スラデック　『蒸気駆動の少年』（2008年）
マーゴ・ラナガン　『ブラックジュース』（2008年）
グレッグ・イーガン　『TAP』（2008年）- のち河出文庫
ジョージ・R・R・マーティン　『洋梨形の男』（2009年）
フリッツ・ライバー　『跳躍者の時空』（2010年）
テリー・ビッスン　『平ら山を越えて』（2010年）
ロバート・F・ヤング　『たんぽぽ娘』（2013年）- のち河出文庫

これらの作品を通じて、「奇想コレクション」は日本の読者に海外短編の多様な魅力を紹介し、一定の評価を得たシリーズとなりました。

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