奚琴

奚琴（けいきん）は、中国を起源とし、朝鮮半島に伝わった擦弦楽器です。中国語ではシーチン（奚琴、拼音: xīqín）、朝鮮語ではヘグム（해금）と呼ばれます。胡琴属の楽器の祖先とも言われ、二胡や胡弓など、東アジア各地の擦弦楽器に影響を与えたと考えられています。

起源と発展

奚琴は、中国東北部のシラムレン川流域に居住していた奚という遊牧狩猟民族によって創造されたとされています。奚はモンゴルや契丹に近い民族だったと考えられています。

中国においては、唐の時代の宮廷音楽で使用されたのが最初の記録です。当初は竹の棒を弓として使用していましたが、宋代になると改良され、馬の尾で作られた弓で演奏されるようになりました。当時の奚琴は垂直に構えられ、2本の絹糸の弦が張られていました。

北宋時代の音楽理論家、陳暘が1105年に著した『楽書』には、奚琴が外国から伝来した二弦の撥弦楽器として紹介されています。しかし、楽器の構造や演奏方法から考えると、擦弦楽器として扱われていた可能性が高いと考えられています。

中国の南管で使用される二弦の楽器や、キルギスの音楽「kuu」で用いられる「Kyl kiyak」という楽器は、奚琴と類似した構造を持っています。これらの楽器は、奚琴の系統を受け継いでいると考えられています。

朝鮮半島の奚琴（ヘグム）

1116年頃に朝鮮半島に伝えられた奚琴は、ヘグム（해금）と呼ばれ、中国の奚琴と非常によく似た形状をしています。棒状のネックと木製の胴体、2本の絹糸の弦で構成され、演奏時には膝の上に垂直に立てて構えます。その独特な音色から、「ケンケンイ（깽깽이）」という愛称でも親しまれています。

1960年代には、北朝鮮で小奚琴（ソヘグム、소해금）という現代的な改良が加えられた4弦の楽器が開発されました。ソヘグムは、ヘグムよりも音域が広く、より多様な音楽表現が可能となっています。

奚琴は、その歴史と構造において、東アジアの擦弦楽器のルーツとして重要な位置を占めています。その音色は、各地域の音楽文化の中で独自に発展し、今もなお多くの人々に愛されています。

関連項目

胡弓
二胡
* モリンホール

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