奥山治

奥山治（おくやま おさむ）は、1918年1月31日に生まれ、2000年3月18日に没した、東京都青ヶ島村の村長を五期17年3ヶ月間務めた人物です。彼は、生涯を通じて玄米自然食（マクロビオティック）の普及に努め、東洋哲学の思想家としても知られています。

生い立ちと背景

奥山治の故郷である青ヶ島は、1785年の天明の大噴火により全島民が避難し、一時無人島となりました。しかし、約50年の歳月をかけて、1835年に島民たちは八丈島から帰還を果たしました。この帰還を指導したのが、奥山治の先祖である佐々木次郎太夫であり、柳田國男は彼を「青ヶ島のモーゼ」と称えました。
奥山治は、その佐々木次郎太夫の末裔として生まれました。彼の時代もまた、僻地や離島からの総引き揚げが国策として推進された時代でしたが、彼は村議会議員時代から通算27年にわたり、島の総引き揚げに抵抗し、島の発展に尽くしました。そのため、彼は「現代のモーゼ」とも呼ばれています。

人物像

奥山治は、三人兄弟の末っ子として生まれました。1938年3月に旧制東京府立第一商業学校を卒業後、桜沢如一の門下となり、玄米食運動（マクロビオティック）や世界政府運動に熱心に取り組みました。兄弟弟子には久司道夫や田中波留子（フローラ）などがいます。戦況が悪化したため、桜沢如一の指示により、門下生はそれぞれの故郷へ帰ることとなりました。
奥山治は帰郷後、八丈島と青ヶ島の国民学校で教員を務めましたが、終戦後、英語が堪能であったことから、武装解除のために訪れたアメリカ軍の将軍によって、青ヶ島の政治、経済、文化の全権を委任されました。これにより、彼は事実上、島の指導者となりました。
地方自治法が適用される以前の1947年以前から、奥山治は実質的に村長として島を統治し、27年にわたる政治活動の中で、村民の悲願を次々と実現していきました。彼は温厚誠実で品行方正、清廉潔白で自由闊達な性格であり、卓越した政治的識見と指導力により、村民からの深い信頼を得ていました。

村長としての功績

村長就任後、奥山治は「青ヶ島開発白書」を発表し、青ヶ島の抜本的な生活基盤と産業の確立を目標としました。当時、青ヶ島は電気や水道が未整備で、生活インフラは著しく遅れていました。彼は、この白書に基づいて、農道、村道、都道の整備、発電設備の設置、全家庭への電力供給、三宝港の開港（突堤桟橋建設）、船便航路の確保、連絡船の建造、三宝港のウインチ荷揚げ設備の設置、産業振興、診療所、保育園、小学校、中学校、体育館、図書館、村民住宅、集会所、老人福祉館、村役場庁舎、山斜面雨水集水式簡易水道（全家庭水道化）、大千代港の開港、ダイヤル電話の開通、年金受給などを実現しました。彼のマニフェスト達成の実績は枚挙にいとまがありません。
奥山治は、日本の僻地・離島がその故郷を捨てざるを得なかった時代に、孤軍奮闘し、青ヶ島の生活、文化、暮らしを守り抜きました。1979年に村長を勇退しています。

思想

奥山治は、離島である青ヶ島村の開発の最終目標は、恒久的な自立であり、格差のない村民生活の基盤を確立することであると考えていました。当時の青ヶ島には、漁港がなく、豊富な海産資源も他県や他島によって乱獲されていました。また、陸上産業や農業資源も乏しいため、このままでは多額の公費を投じた公共施設も自滅するか、島民が島を離れるしか選択肢がない状況でした。同じ境遇にあった八丈小島は、1969年に無人島化しています。
奥山治は、先祖たちが苦難を乗り越えてきたことを考え、青ヶ島の恒久自立のためには、抜本的な開発をするか、日本から独立して治外法権を得るかの二択しかないと考えました。彼は、地下足袋姿でたびたび上京し、東京都庁前で断食をしながら青ヶ島の現状を訴えました。

子供たち

奥山治には、以下のような子供たちがいます。
長男：佐々木ベジ（JASDAQ上場 夢みつけ隊株式会社取締役、フリージアグループ会長）
長女：佐々木コル（東洋医学治療院 代表取締役社長、看護大学、中国遼寧省中医大卒業）
次男：奥山治郎（フリージアハウス 代表取締役社長）
三男：奥山一寸法師（東証二部上場 フリージア・マクロス 代表取締役社長）
四男：奥山順治（もみの気ハウス株式会社 会長）

参考文献

「青ヶ島島史」小林亥一著、1981年 青ヶ島村役場発刊
「日本の首長 生い立ちから抱負まで」48P-50P「東京都青が島村 奥山治 島の救世主に拍手」草薙書房 1981年8月30日発刊
「元青ヶ島村長 奥山治 功績調書」青ヶ島村長（佐々木宏）1991年2月20日発行

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