奥州総大将

奥州総大将について

奥州総大将（おうしゅうそうだいしょう）は、南北朝時代において日本の幕府が地方を統治するために設けた役職です。この役職の主な目的は、足利氏の一族を中心に奥羽地域の統制を強化することにありました。

元弘3年（1333年）、建武政権下での新たな地方官制が整えられ、陸奥国司には北畠顕家が、出羽国司兼秋田城介には葉室光顕が任命されました。特に、2年後の建武2年（1335年）には、北畠顕家が鎮守府将軍に就任し、その一環として陸奥国府に「陸奥将軍府」と呼ばれる支配機関を設立しました。この機関は、地域の有力な武士たちに権限を委譲することによって、奥州の武士たちから広範な支持を得ようとしました。

しかし、同じ年の中先代の乱が引き金となり、足利尊氏は建武政権に反発します。この反発により、建武政権は次第に崩壊に向かっていきました。尊氏は、奥羽の支配を担当していた斯波家長を奥州総大将に任命し、彼に陸奥国と出羽国の軍事指揮権を授けました。尊氏は上洛するものの、子の義詮を奥羽に残し、斯波家長はその義詮を支えるために執事の職も兼任することになりました。

北畠顕家の運営する陸奥将軍府は、各郡の郡奉行に守護並みの権限を与えるなどの政策を打ち出し、地元の武士たちから深い支持を得ていました。このため、斯波家長の統治は思うように進まず、延元2年/建武4年（1338年）において、鎌倉で顕家率いる奥州軍と対峙し、戦闘の末、家長は敗北して戦死してしまいました。

同じ年、石塔義房が新たに奥州総大将として奥州に派遣されました。義房は、陸奥将軍府から実務に優れた官僚たちを引き抜く一方で、郡検断職に既得権限を公認させるなどの手法を駆使し、有力な武士たちを味方に付け、国府の奪還を果たしました。

その後、貞和6年（1345年）には畠山国氏と吉良貞家が奥州管領として任命され、これは奥州総大将の役割が終焉を迎えることを示唆しています。これにより、奥州の支配構造は一新され、地域の政情もまた変動していくことになります。奥州総大将という役職は、当時の武士たちの力関係や、地域統治のあり方を象徴する重要な地位であったのです。

関連項目

• - 奥州管領

奥州総大将の職は短命であったものの、その設立と廃止は南北朝時代の政治的背景や武士層の力学を表す重要な出来事でした。

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