奥澤敬太郎

奥澤 敬太郎

奥澤 敬太郎（おくざわ けいたろう、1847年（弘化4年） - 1909年（明治42年）7月22日）は、日本の武道家であり、柔道整復師としても知られています。旧姓は黒須ですが、奥澤七事斎良重三造の養子となり奥澤姓を名乗りました。本籍は現在の群馬県山田郡にあたります。柔術の分野では、戸田流（気楽流）と天神真楊流の二つの流派を修め、特に戸田流では16世の免許皆伝者となりました。天神真楊流においては、井上敬太郎柳均斎源正房という別名を用いています。

経歴

奥澤は激動の幕末から明治にかけての時代を生きました。1866年（慶応2年）、養父である奥澤三造が姉小路公の朝廷御用人を務めていましたが、尊王攘夷運動に関わったとして獄死します。養父の没後、敬太郎は引き続き新政府に奉職しました。明治4年（1871年）には、有栖川宮熾仁親王が福岡県令となった際に随行し、福岡に赴任。その後東京へ戻り、明治6年6月には、下谷五條町（現在の上野公園周辺）で開催された柔術と撃剣の興行に、磯正智、正信、素行、福田八之助といった武道家たちと共に参加しています。明治7年（1874年）2月からは元老院の下級官吏などを務めましたが、明治9年（1876年）4月に免官となりました。

武術の師と道場

柔術は、まず養父である奥澤三造（七事斎）から戸田流（気楽流）の手ほどきを受け、免許皆伝を得ました。天神真楊流は、磯又右エ門に師事してその免許を取得しています。

明治維新後の廃刀令（1876年）によって武士の帯刀が禁じられる中、奥澤は養父が営んでいた柔術道場と接骨院の事業を引き継ぎました。明治9年（1876年）、東京府東京市本郷区湯島天神下同朋町（現在の湯島）に「修心館」道場を開設します。修心館では、柔術の教授と並行して、骨接ぎ（柔道整復術）を行いました。

教育者として

修心館の所在地は、昌平坂学問所、開成所、医学所が統合されて設立された大学校（後の東京大学）に近い場所でした。このため、修心館には東京大学の学生をはじめ、後の講道館を創立する嘉納治五郎、添田壽一、阪谷芳郎、保利眞直、井上通泰、三浦謹之助、山口弘達といった多くの若者が門弟として集まり、柔術の指導を受けました。また、奥澤自身の子である奥澤勘一や娘婿の井上縫太郎もここで学びました。

門弟の嘉納治五郎が学習院の教頭となったこともあり、奥澤は明治16年4月から明治19年3月にかけて、学習院の初代柔道師範を務めました。学生への武術・柔道指導に情熱を注ぎ、東京美術学校（現在の東京芸術大学）でも体操および柔道の教官として教鞭をとっています。

接骨医としての活動

奥澤は接骨（ほねつぎ）の技術も有しており、修心館で施術を行っていました。明治7年（1874年）の医制改革以降、骨接ぎ師や漢方医の立場は不安定なものとなりました。さらに、明治18年（1885年）には「入歯歯抜口中療治接骨取締方」という法令によって接骨行為が一時的に禁止される事態となります。奥澤は、内務省令である按摩術営業取締規則の改正を求め、門弟であり医学博士であった三浦謹之助らの協力を得て請願活動を行いました。この請願は奥澤の没後、明治44年（1911年）8月になってようやく改正が実現し、柔道整復師の活動が再び認められる道が開かれました。

後継者

奥澤の孫にあたる井上武雄は、東京医専（後の東京医科大学）を卒業した整形外科医です。修心館は一時的に講道館柔道として井上武雄が継承しましたが、後に宮城県仙台市に移転しました。

参考文献

* 『大日本人物史』大日本人物史編纂社、1925年。

（脚注・出典は入力になかったため含めていません）

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