奥田三角

奥田三角（おくだ さんかく）

奥田三角は、江戸時代中期に活躍した儒学者です。元禄16年（1703年）に生まれ、天明3年5月4日（1783年6月3日）に没しました。名は士亨、字は嘉甫、通称は奥田宗四郎、後に奥田清十郎と名乗りました。蘭汀、南山という別号も持っています。

生涯

伊勢国・津藩での活躍

三角は伊勢国（現在の三重県）の津藩において、4代の藩主に仕え、50年以上にわたり学職を務めました。その門人は800人にも及んだと言われています。

出自

三角は、伊勢国飯野郡豊原村（現在の三重県松阪市豊原町）の奥田家出身です。奥田家は近江国の豪族・佐々木氏の流れを汲む名家とされ、三角はその14代または15代にあたるとされています。4代前の奥田忠重は、越前豊原（現在の福井県坂井市丸岡町豊原）から櫛田川沿いの地に移り住み、そこを豊原と名付けて開拓しました。奥田邸は「豊原陣屋」と呼ばれ、豊原組の大庄屋を務めていました。その跡地は、現在の櫛田郵便局付近に位置します。

儒学への道

儒学を志した三角は、叔父である柴田蘋州に師事した後、享保6年（1721年）に京都へ出て伊藤東涯のもとで古義学を学びました。享保16年（1731年）には、兄・奥田龍渓の後を継いで津藩に儒官として迎えられ、儒学の教授と公務に尽力しました。

晩年

津で多くの門下生を育てた三角は、明和7年（1770年）に68歳で江戸へ出て9か月間職務を行った後、再び津に戻りました。安永5年（1776年）に74歳で致仕（退職）し、故郷の豊原に戻って「三角亭」と名付けた自宅で過ごし、天明3年（1783年）に生涯を閉じました。

死後

三角の記録は、「先哲叢談」や「近世畸人伝」などに記されています。豊原にあった三角亭は現存しませんが、松阪市豊原町の光蓮寺には、三角にまつわる石碑や書物などの史跡が数多く残されています。

エピソード

三角形へのこだわり

三角は、三角形を非常に好んでいました。自宅を「三角亭」と名付けただけでなく、窓、文具、文庫、そして日用品に至るまで、あらゆるものを三角形にしなければ気が済まなかったと言われています。代表的な著書も「三角亭集」という名前です。豊原にある奥田家の墓地・枕山には、墓石や墓碑の上部が三角形になっているものが約150基も残されています。

櫛田川との関わり

奥田邸のあった豊原組大庄屋（豊原陣屋）の近くには、「櫛田の渡し」と呼ばれる櫛田川の渡し船がありました。櫛田川に親しんでいた三角は、櫛田川に「揥水（ていすい）」という別名を付けました。「揥」とは、櫛のことです。現在、「揥水」は奥田邸跡地に近い小学校（揥水学校→揥水小学校）の名前にも採用されています。

曾我蕭白との交流

三角は、兄・奥田龍渓とともに絵師・曾我蕭白と交流があったことが知られています。蕭白の画「達磨図」には、三角道人という名前で三角が賛文を寄せています。兄・龍渓は蕭白の門人であり、蕭白は龍渓の著書「存心」の挿絵も描いています。ちなみに龍渓も一時、三角と同様に津藩に仕え、致仕して豊原組大庄屋を継いでいます。蕭白は豊原の奥田邸に近い朝田寺（松阪市朝田町）にも多くの作品を残しており、そのひとつ「唐獅子図」は国の重要文化財となっています。

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