重祚

重祚：君主の二度目の即位

重祚（ちょうそ、じゅうそ）とは、君主が一度退位した後、再び帝位または王位に就くことを意味します。これは単なる権力掌握ではなく、一度は地位を離れた者が再び最高権力者となる複雑な歴史的現象です。本稿では、重祚の事例を日本、中国、朝鮮、ベトナム、そしてその他の国々を中心に解説します。

日本の天皇

日本の歴史において重祚した天皇は、皇極天皇（斉明天皇）と孝謙天皇（称徳天皇）の2名です。皇極天皇の重祚は、息子の天智[[天皇]]による政治的思惑に基づくもので、一種の時間稼ぎとしての側面を持っていました。一方、孝謙天皇は、自身の政治的意図から譲位した淳仁天皇を廃位し、自ら再び皇位に就きました。これらの事例は、天皇の権力と政治的駆け引きが複雑に絡み合った状況を示しています。

後醍醐天皇については、元弘の乱における隠岐への流罪、光厳[[天皇]]（北朝天皇）の即位、そして後醍醐天皇の帰京と光厳[[天皇]]の治世否定という複雑な経緯があります。後醍醐天皇の治世を前後2回とみなすか、1回とみなすかは歴史学上の議論の的となっています。北朝正統派の歴史書でも、重祚とみなすか否かは異なり、南朝正統派では光厳[[天皇]]の在位自体を否定し、後醍醐天皇の治世は途切れていなかったと解釈しています。

明仁上皇（平成天皇）の退位は、皇室典範特例法により、皇位継承権を持たないため、重祚は不可能です。

中国の皇帝

中国においては、武則天の時代が重祚と関連する複雑な事例を提供します。武則天の登位、武周の建国、そして中宗・睿宗の即位と廃位、武則天による譲位と中宗・睿宗の復位という一連の出来事は、権力闘争と政治的駆け引きの激しさ、そして君主の座の不安定さを示しています。

明代の英宗は、土木の変における捕虜経験の後、弟の景泰帝の治世を経て復位しました。明は一世一元の制を採っていたため、英宗は2つの元号（正統、天順）を用い、廟号では英宗と称されることが多いですが、元号を用いて正統帝、天順帝と呼ぶこともあります。

清朝の宣統帝の満洲国皇帝への即位は、中国の支配を意味しなかったため、一般的には重祚とはみなされません。張勲復辟も清朝再興の試みではありましたが、成功には至りませんでした。

朝鮮の王

高麗時代、元による支配下に置かれた時期には、元の意向により王位継承が頻繁に行われ、王世子への譲位と復位が繰り返されました。これは王朝の混乱と元への依存を深め、高麗の衰退の一因となったと考えられています。

ベトナムの皇帝

16世紀のベトナム黎朝後期では、東京鄭氏の傀儡皇帝である黎神宗が重祚しています。

その他の国々

重祚とは通常呼ばれないものの、他の国々にも類似した事例が存在します。ユダヤのハスモン朝、スウェーデン、ポーランド・リトアニア、スペイン、ギリシャ、ルーマニア、カンボジア、ネパールなど、様々な国で君主が一度退位した後、様々な経緯を経て再び権力を取り戻す事例が見られます。これらの事例は、それぞれの国の政治的、社会的な状況を反映しており、歴史を理解する上で重要な視点を提供します。これらの事例は、単なる権力闘争という側面だけでなく、社会情勢の変化や国際関係、更には個人の能力や決断といった様々な要素が絡み合った複雑な歴史的現象であることを示しています。

結論として、重祚は単なる権力の回復ではなく、複雑な政治的、社会的な要因が絡み合った歴史的現象であり、各国の歴史を理解する上で重要な要素となっています。

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