女子美術大学付属高等学校・中学校

概要

女子美術大学付属高等学校・中学校は、東京都杉並区に位置する私立の女子中高一貫校です。美術大学の附属校としては国内で唯一の存在であり、美術分野における長い歴史と実績を誇ります。1900年に日本で初めて設立された女子美術教育機関を前身とし、美術界をはじめとする各分野に多くの卒業生を輩出してきました。

創立以来、美術活動を通して感性を磨き、社会に貢献できる自立した女性を育成することを教育目標としています。生徒の自主性を尊重する教育方針を貫き、「知性が感性を支える」という理念のもと、美術教育と学科教育の両面を重視した教育課程を編成しています。

沿革

1900年: 私立女子美術学校が設立。
1901年: 本郷区弓町に校舎が完成。
1908年: 火災により弓町校舎が焼失。
1909年: 本郷菊坂町に新校舎が完成し移転。
1915年: 女子美術学校付属高等女学校が開校。
1916年: 私立佐藤高等女学校に改称。
1935年: 杉並に新校舎が完成し移転。旧校舎は佐藤高等女学校専用に。
1945年: 空襲で菊坂校舎が全焼。佐藤高等女学校は杉並校舎へ移転。
1947年: 学制改革により新制佐藤中学校が開設。
1948年: 学制改革により新制佐藤高等学校が開設。
1951年: 女子美術大学付属高等学校・中学校に改称。
1954年: 桑沢洋子デザインの制服を採用。
1960年: 長野県軽井沢町に「軽井沢寮」を開設。
1962年: 杉並校地に新校舎が完成。
2000年: 女子美術大学創立100周年。
2010年: 新校舎と体育館が完成。
2012年: 旧東京文化幼稚園・小学校舎を取得し改修。ギャラリーを設置。
2013年: 杉並キャンパスの整備事業が完了。
2015年: 創立100周年記念事業を実施。
2019年: 新4号館が落成。

教育課程

中学校では、週4時間の美術教育に加え、基礎的な技術習得を重視したカリキュラムが組まれています。素描、着彩、彫塑、デザイン、版画、染色、工芸など、幅広い分野を学び、素材の選び方、用具の扱い方、美術鑑賞のマナーといった基礎知識の習得と技術力、表現力の向上を目指します。

高等学校では、普通科教育課程に加え、週6～10時間の美術教育が行われます。より高度な技術習得を目指し、素描、着彩、彫塑、版画、染色、工芸、陶芸、グラフィックデザイン、プロダクトデザイン、コンピューターグラフィックス、空間構成、美術史などを学び、技術力、表現力、そして創造性の向上を目指します。通常授業の課題に加え、美術課題が多く設定されている点が特徴です。

高等学校では、内部進学者と外部入学者が混合でクラスを編成する併設型中高一貫教育を採用しています。高等学校入学試験では、「学科試験」と「実技試験」の両方が課されます。

校風と学校行事

クラブ活動や学校行事が盛んで、生徒会組織である「鏡友会」が中心となって、運動会、女子美祭などの学内活動を運営しています。

運動会: パフォーマンスアート、創作ダンス、ファッション造形など、視覚・舞台芸術の要素を取り入れた応援合戦が特徴です。ダンスの構成、選曲、振付、衣装制作は全て生徒が自主的に行います。
女子美祭: 全生徒作品の展示、選抜クラスの展示の他、管弦楽、声楽、演劇、洋舞、バトントワリング、ファッションショー、各部活・同好会の発表会などが催される、学校最大のイベントです。女子美祭ポスターは、高校2年生が夏季休業中に制作し、全校生徒の投票によって選ばれます。
研修旅行: 奈良・京都（高3）、広島（中3）への研修旅行、軽井沢、房総、安曇野へのスケッチ旅行（中1、中2、高1）などがあります。
海外研修: パリやイタリアへの美術研修旅行（高校生対象）では、西洋美術史や西洋建築史を学ぶ機会が設けられています。
* その他: オーストラリア語学研修、美術鑑賞会、スキー教室などもあります。

校章

校章は、初代校長の藤田文蔵が考案したもので、八咫鏡をモチーフに中央に「美」の文字が配置されています。鏡は自らの姿と行いを映すことから自省を促す意味があり、また手本を意味する「鑑」に通じることから、「女子美生は美の心を忘れず、身を鍛え、人の手本となる真摯な女性に成長してほしい」との願いが込められています。校章に込められた「智の美」「芸（わざ）の美」「心の美」の三つの美の柱は、女子美術大学の教育理念となっています。

校舎

2010年に完成した新校舎は、美術教育に特化した設計がなされており、絵画室、デザイン室、デッサン室、書道室、工房、CG教室などが設置されています。生徒作品を展示するギャラリースペースも各所に設けられ、生徒の作品を日常的に鑑賞できるレイアウトが採用されています。教室の間仕切りは可動式で、必要に応じて大規模な教室として使用することも可能です。

校内には画材店「イワタ」が入店しており、画材の購入に便利です。校舎は女子美術大学杉並キャンパス内に位置し、キャンパス内の樹木は杉並区の保護樹木に指定されています。

制服

制服は、桑沢洋子デザインによるもので、ブレザー、ブラウス、ジレの3ピースを組み合わせて着用します。1954年に採用されたプリーツスカートとリボン型の制服は、現在まで引き継がれています。リボンは女子美工芸科の卒業生による手織りです。2023年度からは、中学校・高等学校共にスラックスが導入されています。

クラブ活動

文化部、運動部、同好会ともに活動が活発です。文化部では、美術、漫画研究、写真、茶道、華道などがあり、運動部では、バスケットボール、バレーボール、ダンスなどがあります。

著名な出身者

美術家、イラストレーター、デザイナー、ファッションデザイナー、文学、女優、歌手、舞踊家、音楽家、タレント、声優、スポーツ選手など、各界で活躍する卒業生を多数輩出しています。

主な受賞歴

全日本学生美術展、東京私立中学高等学校生徒写真・美術展、国際高校生選抜書展、高校生国際美術展、ターナー・アワード、全国高等学校ファッションデザイン選手権大会など、数々のコンクールで優秀な成績を収めています。

交通

東京メトロ丸ノ内線東高円寺駅、または新中野駅から徒歩8分です。

付属大学・施設

女子美術大学、女子美術大学短期大学部、女子美術大学美術館が併設されています。

その他

玩具デザイナーの高木ゆうき氏（卒業生）企画の「女子美リカちゃん」が発売されたり、アニメ作品『GA 芸術科アートデザインクラス』の制作協力を行ったりするなど、様々な分野で活動しています。杉並区と連携協定を結び、地域のアートプロジェクトにも参加しています。

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