女山神籠石

女山神籠石（ぞやまこうごいし）

女山神籠石は、福岡県みやま市瀬高町大草に位置する古代山城の遺跡です。近年では「女山城（ぞやまじょう）」とも呼ばれることもあります。この城跡は、その歴史的価値から国の史跡に指定されています。

概要

女山神籠石は、筑後平野と有明海を見渡せる古塚山（標高約190メートル）の西側斜面に築かれた古代山城です。文献には記録が残っていないため、築城時期や目的は正確には分かっていません。しかし、その構造から、同時期に築かれた他の山城（神籠石系山城）と同様に、古代の防衛施設であったと考えられています。

城は、古塚山の地形を利用し、土塁を巡らせて築かれ、谷部には石塁で構築された水門が設けられています。これまでに数回にわたる発掘調査が行われ、その全容が徐々に解明されてきました。現在は、一部が女山史跡森林公園として一般公開されており、その歴史に触れることができます。

歴史

古代

女山城は、文献に記録がないため、その詳しい歴史は謎に包まれています。しかし、7世紀後半頃に朝鮮半島での緊張が高まった時期に、九州北部や瀬戸内地方で多くの古代山城が築かれたことから、女山城もその一つであると推定されています。1981年の調査では、築城時期は7世紀後半頃と推定されています。城に関する伝承は残されていませんが、かつては邪馬台国の卑弥呼の居所とする説もありました。また、城域内からは、築城以前の6世紀後半頃に築かれた山内古墳群や、銅矛も出土しています。

近代以降

近代以降の主な出来事は以下の通りです。

1900年（明治33年）：八木奘三郎による報告。
1935年（昭和10年）：第1次調査で、水門4ヶ所と766個の列石が確認される。
1953年（昭和28年）：国の史跡に指定。
1963年（昭和38年）頃：神籠石論争が山城説でほぼ収束。
1965年（昭和40年）：土取り工事により列石の一部が崩壊。
1967年（昭和42年）：第2次調査で、土取り工事による崩壊箇所が調査される。
1971年（昭和46年）：第3次調査で、産女谷水門の確認と列石線の測量が行われる。
1977年（昭和52年）：史跡範囲が追加指定される。
1981年（昭和56年）：第4次調査で、山内2号墳付近の列石が調査される。
2010・2011年度（平成22・23年度）：第5次調査で、基礎資料作成のための確認調査が行われる。

遺構

城壁

城壁は、総延長が約2.7キロメートルから3キロメートルと推定されています。古塚山の西斜面を馬蹄形に取り囲むように築かれており、山頂部を最高所として、4つの谷部（産女谷、源吾谷、長谷、粥餅谷）を取り込んでいます。城壁の構造は、土塁とその裾部に設けられた列石で構成されています。現在、約1.5キロメートルの列石線が確認されていますが、北側と東側では土塁や列石線は確認されていません。

列石は、基本的には長方形の切石で構成されていますが、一部には自然石も使用されています。また、上端にL字型の切り欠きが施された石も存在します。これらの石は赤色粘土層の上に据えられており、列石の前面・上面を直線的に揃え、曲線的に配置されています。列石の上の土塁は版築によって築かれており、2種類の土層が交互に重なっています。また、列石の前には3メートル間隔で柱穴も確認されています。

水門

水門は、産女谷、源吾谷、長谷、粥餅谷の4ヶ所に設けられており、いずれも石塁で構成されています。

産女谷水門：4つの水門の中で最南に位置します。土取り工事によって崩壊しており、現在の構造は積み替えられたものです。現在は、幅約7メートル、高さ約2.7メートルを測ります。
源吾谷水門：産女谷水門の北に位置します。こちらも土取り工事により崩壊しています。
長谷水門：源吾谷水門の北に位置します。比較的良好な状態で遺存しており、現在の石塁は5段積みで、幅約7.5メートル、高さ約2.5メートルを測ります。石材は正方形または長方形の切石が用いられています。
粥餅谷水門（横尾寺谷水門）：4つの水門の中で最北に位置します。良好な状態で遺存しており、現在の石塁は幅約7メートル、高さ約3メートルを測ります。石材は切石で、大きさにはばらつきがあります。

その他、城内施設等の存在は、現在のところ確認されていません。

山内古墳群

山内古墳群は、女山神籠石の域内にある古墳群で、2基の円墳から構成されています。

1号墳：直径約14メートルの円墳で、横穴式石室が設けられています。石室は北西方向（平野部方向）に開口しており、現在では石室の上面が失われています。
2号墳：1号墳とほぼ同じ規模の円墳で、同様に横穴式石室が設けられています。石室は1号墳と同じく北西方向（平野部方向）に開口しています。

これらの古墳は、古墳時代後期の6世紀後半頃に築造されたと推定されています。

文化財

女山神籠石は、1953年（昭和28年）11月14日に国の史跡に指定され、1977年（昭和52年）7月14日に史跡範囲が追加指定されました。

脚注

参考文献

史跡説明板
『女山神籠石 -福岡県みやま市瀬高町所在の国指定史跡女山神籠石史跡内容確認調査報告書-（みやま市文化財調査報告書 第8集）』みやま市教育委員会、2013年。
「女山神籠石」『みやま市史 資料編 上巻（みやま市史 2）』みやま市、2017年、391-397頁。
森貞次郎「女山神籠石」『国史大辞典』吉川弘文館。
「女山神籠石」『日本歴史地名大系 41 福岡県の地名』平凡社、2004年。
「女山神籠石」『国指定史跡ガイド』講談社。

関連文献

『女山・山内古墳群 -福岡県山門郡瀬高町女山神籠石内所在古墳群の調査-（瀬高町文化財調査報告書 第2集） (PDF)』瀬高町教育委員会、1982年。

関連項目

古代山城

外部リンク

女山神籠石 - 国指定文化財等データベース（文化庁）
女山神籠石 - みやま市ホームページ

もう一度検索