女性上位時代

女性上位時代（La Matriarca）

概要

『女性上位時代』は、1967年にイタリアで製作・公開されたパスクァーレ・フェスタ・カンパニーレ監督による作品です。原題はイタリア語で「女性リーダー」を意味する「La Matriarca」であり、英語圏では「The Libertine」や「The Matriarch」のタイトルでも知られています。本作は、社会風刺や人間喜劇を得意とするイタリア式コメディの系譜に連なる一編として位置づけられています。

製作

本作は、1967年に映画プロデューサー、シルヴィオ・クレメンテッリ率いるクレシ・チネマトグラフィカによって製作が始まりました。物語の原案はオッタヴィオ・イェンマが手掛け、彼自身がニコロ・フェッラーリと共に脚本を執筆しました。

撮影監督を務めたのはアルフィーオ・コンティーニです。彼はディーノ・リージ監督の『追い越し野郎』（1962年）や『怪物たち』（1963年）といったイタリアコメディの名作を手掛けた経験を持ち、本作で初めてカンパニーレ監督と組みました。その後も二人の協力関係は続き、『完璧な人などいない』（1981年）をはじめ、『トリエステから来た女』（1982年）、『類猿人ビンゴ・ボンゴ』（同年）など、数多くの作品を共に生み出しました。

美術デザイナーにはフラヴィオ・モゲリーニが参加しています。モゲリーニは、ロベルト・ロッセリーニ監督の『ローマで夜だった』（1960年）、ヴァレリオ・ズルリーニ監督の『鞄を持った女』（1961年）、ピエル・パオロ・パゾリーニ監督の『アッカトーネ』（同年）など、イタリア映画史に残る重要な作品の美術を手掛けてきた実力者です。カンパニーレ監督とは、本作以前にカトリーヌ・スパーク主演の『結婚戦争』（1966年）で既に協力しており、本作は二作目にあたります。モゲリーニは1970年代以降、映画監督としても活躍するようになります。

衣裳デザイナーのガイア・ロマニーニは、ヴァレリオ・ズルリーニの『鞄を持った女』（1961年）やマルコ・ヴィカリオの『黄金の七人』（1965年）といった話題作の衣裳を担当しています。

音楽を担当したのはアルマンド・トロヴァヨーリです。彼はカンパニーレ監督と、カトリーヌ・スパーク主演作である『結婚戦争』（1966年）、『イタリア式不倫』（同年）に続く三度目のタッグとなりました。以降も『裸でどこ行くの?』（1969年）や『私のためになんでもすると言って』（1976年）など、カンパニーレ作品の音楽を数多く手掛けています。

あらすじ

物語は、20歳という若さで夫フランコを亡くし、未亡人となったミミ（カトリーヌ・スパーク）を中心に展開します。夫の死後、ミミは彼が人には言えない特異な欲望のために密かに用意していた秘密の部屋があることを知ります。好奇心と反発心から、ミミはその部屋を自分自身の性の探求のために使うことを決意します。

彼女は夫が密かに耽溺していたサディズムやマゾヒズムの世界を理解しようと、関連する専門書を読み漁ります。そして、夫の友人である弁護士のサンドロ・マルディーニや、親友の夫ファブリツィオ、さらにはテニス講師や真面目な歯科医など、様々なタイプの男性たちを夫の隠し部屋へと誘い込み、性の実験を重ねていきます。

ミミの奔放な行動を心配した母親は、彼女に精神分析を受けるよう勧めます。大学病院を訪れたミミは、そこで放射線科医のカルロ・デ・マルキ（ジャン＝ルイ・トランティニャン）と出会います。彼は他の男性たちとは異なり、ミミの好奇心を静かに受け止めます。学生と偽ってカルロの講義にも顔を出すようになったミミは、やがて彼をも例の部屋へ誘います。

二人の関係は深まり、最終的に結婚することになります。ミミは念願であった、パートナーとの対等、あるいはそれ以上の関係性、すなわち「女性上位」を実現します。物語の結びでは、ミミが夫となったカルロに文字通り馬乗りになり、新しい家の中を楽しげに歩き回る象徴的な場面が描かれます。

キャスト

主要キャストには、主人公ミミを演じるカトリーヌ・スパーク、彼女の夫となるカルロ・デ・マルキ博士を演じるジャン＝ルイ・トランティニャンが名を連ねます。また、夫の友人であるサンドロ・マルディーニ弁護士をルイジ・プロイエッティが演じるほか、レンツォ・モンタニャーニ、ファビエンヌ・ダリ、ノラ・リッチといった俳優陣が出演しています。本作には、テレビ放送時に制作された日本語吹替版も存在し、ミミの声を上田みゆきが担当するなど、著名な声優陣が参加しています。

公開と反響

イタリアでは1967年12月23日にEIAの配給で劇場公開されました。日本ではその約1か月後、1969年2月1日に東和映画（現在の東宝東和）によって劇場公開されています。日本での初公開から長い年月を経た2000年7月29日には、NSW配給で再び劇場公開され、その翌年にはブロードウェイからDVDも発売されました。日本の音楽ユニット、ピチカート・ファイヴが2006年に発表したアルバムのタイトル『女性上位時代』は、本作から引用されたものです。

（注：本作は、カトリーヌ・スパークが出演した他の作品、『キャンディ』（1968年）や、『禁じられた抱擁』（1963年）で彼女が男性にまたがる描写がある絵画が登場することなど、一部で関連性が指摘されることもあります。）

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