女性器切除

女性器切除：歴史、現状、そして国際的な取り組み

女性器切除（Female Genital Mutilation, FGM）は、アフリカを中心に、歴史的に受け継がれてきた慣習です。クリトリスの切除を筆頭に、小陰唇や大陰唇の切除、膣口の縫合など、女性の外性器を損なう行為を指します。しばしば「女子割礼」とも呼ばれますが、その残酷性と非人道性を正確に伝えるために、「女性器切除」という呼称が国際的に用いられています。

歴史と現状

女性器切除は、少なくとも2000年もの歴史を持つとされており、赤道付近のアフリカ諸国で広く行われてきました。通過儀礼としての側面を持ち、結婚前に処女性を証明するため、あるいは女性の性的快楽を抑制し、夫への貞操を守るためなど、様々な理由が挙げられます。現在でも、アフリカ28カ国以上で、主に生後間もない乳幼児から初潮前の少女に対して行われており、人口増加に伴い、被害に遭う少女の数は増え続けています。また、アフリカからの移民を通して、欧米諸国でも問題となっています。

施術方法と健康への影響

女性器切除は、通常、伝統的な助産婦などによって、麻酔や消毒などの医療行為を伴わずに行われます。剃刀やナイフ、鋭利な石などが用いられ、衛生状態も悪く、大量出血や感染症のリスクが高いです。激しい痛みを伴い、施術中やその後の感染症により、死亡することも少なくありません。後遺症として、排尿困難、失禁、性交時の痛み、不妊、難産、HIV感染リスクなどが挙げられます。これらの健康被害は、女性の身体的・精神的な健康に深刻な影響を与えます。

目的と根拠

女性器切除は、伝統的な文化や宗教的信念に基づいて行われます。主な目的としては、処女性の維持、結婚の条件、女性の性的抑制などが挙げられます。しかし、これらの目的は、女性に対する根強い性差別に基づいており、女性の尊厳と権利を著しく侵害するものです。例えば、ソマリアでは、「女性は二本の足の間に悪い物をつけて生まれた」という考え方から、クリトリスや小陰唇の切除、大陰唇の縫合が行われます。

国際的な批判と対策

国際社会では、1970年代頃から女性器切除に対する非難が強まりました。当事国からは、自国の文化を否定するものだとして反論がありましたが、近年は国際的な圧力とアフリカ連合からの廃絶の呼びかけが強まっています。2003年には、女性器切除を含むあらゆる性暴力と性差別を禁止するマプト議定書が採択されました。多くの国が署名・批准していますが、依然として多くの国で根強く残っており、闇で行われる事例も多いです。

多くの国際機関やNGOが、女性器切除の根絶に向けて活動しています。国連は、持続可能な開発目標（SDGs）において、女性器切除を有害な慣習として撤廃することを目標に掲げています。また、2月6日は「国際女性器切除根絶の日」として制定され、啓発活動が行われています。

法的規制と最近の動向

多くの国で女性器切除は違法とされていますが、罰則の執行が不十分なケースも多く、依然として深刻な問題です。エジプトなどでは政府が違法化し、宗教界も反対を表明していますが、闇での手術は続いています。スーダンでは2020年に正式に違法とされ、懲役刑が科せられるようになりました。しかし、根絶には、法的な規制だけでなく、文化的な意識改革や女性のエンパワメントなど、多角的なアプローチが必要です。

結論

女性器切除は、女性の人権を侵害する深刻な人権問題です。その根絶のためには、国際社会の連携、当事国政府の強い意志、地域社会の意識改革、そして何より、女性自身の声を反映した取り組みが不可欠です。継続的な啓発活動、法的規制の強化、そして女性の教育とエンパワメントを通して、この残虐な慣習を完全に終息させる必要があります。

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