女流文学者賞

女流文学者賞（じょりゅうぶんがくしゃしょう）

女流文学者賞は、戦後まもない1946年に創設され、1960年までのおよそ15年間にわたり、日本の女性作家たちによる優れた文学作品を顕彰した文学賞です。当時の文学界において、女性の書き手による創作活動を奨励し、その功績をたたえる重要な役割を果たしました。

この賞は、創設当初は出版社である鎌倉文庫が刊行していた雑誌『婦人文庫』によって主宰されていました。しかし、1949年に鎌倉文庫が経営破綻した後は、新たに組織された『女流文学者会』が運営を引き継ぎ、賞の継続に尽力しました。これにより、出版社の枠を超え、女性文学者たちが主体となって賞を支える体制が築かれました。

賞は1960年の第12回をもってその歴史に区切りをつけました。しかし、その果たした役割と理念は途絶えることなく、翌1961年には中央公論社がこの文学賞の精神を受け継ぎ、『女流文学賞』として新たな形で再出発しました。これにより、戦後日本における女性文学の振興という重要な役割は引き継がれることとなり、多くの優れた女性作家が世に送り出される契機となりました。

以下に、その短いながらも輝かしい歴史の中で、女流文学者賞を受賞した作家と作品の一部を紹介します。

歴代受賞者

第1回（1946年）
平林たい子：『かういふ女』
第2回（1947年）
網野菊：『金の棺』
第3回（1948年）
林芙美子：『晩菊』
第4回（1951年）
吉屋信子：『鬼火』
大田洋子：『人間襤褸』
第5回（1952年）
大谷藤子：『釣瓶の音』
第6回（1953年）
円地文子：『ひもじい日々』
第7回（1954年）
壺井栄：『風』
第8回（1956年）
原田康子：『挽歌』
大原富枝：『ストマイつんぼ』
第9回（1957年）
宇野千代：『おはん』
第10回（1958年）
該当作なし
第11回（1959年）
梁雅子：『悲田院』
第12回（1960年）
芝木好子：『湯葉』
* 倉橋由美子：『パルタイ』

これらの受賞者たちは、戦後の混乱期から復興期にかけて、それぞれの視点から人間や社会を描き出し、日本の文学史に大きな足跡を残しました。女流文学者賞は、彼女たちの活躍を後押しする重要な存在だったと言えるでしょう。賞の歴史は短かったものの、その精神は女流文学賞へと引き継がれ、現在に至るまで日本の文学界において女性作家の重要な登竜門の一つであり続けています。

もう一度検索