如拙

如拙（じょせつ）

如拙（生没年不詳）は、南北朝時代から室町時代中期にかけて活躍した画僧です。道号は大巧（たいこう）と称しました。この道号は、絶海中津（ぜっかいちゅうしん）が『老子』の一節「大巧は拙なるが如し」にちなんで名付けたと言われています。

生涯

如拙の伝記については不明な点が多く残されていますが、『本朝画史』や「墨梅図」の賛などから、彼が九州出身であることが示唆されています。応永年間（1384年-1429年）には、室町幕府4代将軍足利義持の命により「瓢鮎図（ひょうねんず）」を描いたと伝えられています。また、文安5年（1448年）には、夢窓疎石の碑銘を刻む石を探すため、義持の命を受けて四国へ赴いたという記録が『臥雲日件録』に残されています。

これらの記録から、如拙が足利将軍家と非常に密接な関係を持っていたこと、そして相国寺に身を置いていたことはほぼ確実であると考えられています。

後世において、如拙は相国寺の画僧である雪舟に祖と仰がれました。さらに、狩野派や長谷川等伯といった著名な画家たちによって、日本における漢画（唐絵）の祖としての地位を与えられました。

作品

如拙の代表的な作品としては、以下のものが挙げられます。

瓢鮎図（京都・退蔵院）：紙本墨画淡彩で描かれた作品で、国宝に指定されています。
王羲之書扇図（京都国立博物館）：紙本墨画で描かれた作品で、重要文化財に指定されています。

また、伝如拙作品として、以下のものがあります。

墨梅図（正木美術館）：絶海中津の賛がある紙本墨画で、重要文化財に指定されています。
琴棋図屏風（京都・龍光院）：六曲一隻の紙本墨画淡彩で描かれた屏風で、重要文化財に指定されています。
高士探梅図（個人蔵）：紙本墨画で描かれた作品で、重要文化財に指定されています。
三教図（京都・建仁寺両足院）：紙本墨画で描かれた作品で、重要文化財に指定されています。
三教図（ベルリン国立東洋美術館）：紙本墨画で描かれた作品です。

如拙の作品は、水墨画の技法を駆使し、繊細で深みのある表現が特徴です。特に「瓢鮎図」は、禅の公案を絵画化したものとして知られており、その独創的な構図と筆致は、後世の画家に大きな影響を与えました。

参考文献

金沢弘編 『日本の美術334 水墨画 如拙・周文・宗湛』　至文堂、1994年
金沢弘編 『日本の美術207 室町絵画』　至文堂、1983年
松下隆章 座右宝刊行会編 『日本美術絵画全集　第2巻　如拙／周文』 集英社、1978年（普及版は1982年）

関連項目

瓢鮎図
周文

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