妙立寺 (湖西市)

妙立寺（みょうりゅうじ）

概要

妙立寺は、静岡県湖西市吉美に位置する日蓮宗の由緒寺院であり、山号を延兼山と称します。この寺は、数多くの文化財を所蔵する古刹として知られ、地域の人々にとって信仰の重要な拠点となっています。

歴史

創建

妙立寺は、日什上人が豪族である佐原常慶と内藤金平の招きを受け、その外護によって開山されました。当初は現在の湖西市古見（旧吉美東郷小山田）に位置し、妙満寺派に属していました。後に、1941年の日蓮宗各派合同により、身延山を総本山とする日蓮宗の一本山となりました。

中世

永享6年（1434年）、4世上人・日栄の時代に、寺は川尻の愛河に移転し、本堂が建立されました。さらに、6世上人・日典、7世上人・日受の時代には寺観が整えられ、十余りの塔頭を持つ風格を備えました。大永2年（1522年）には、今川氏親が祈願所として寺領を寄進しましたが、永禄10年（1567年）にその寺域に氏親の境目城が築かれたため、現在地に移転することとなりました。

近世

天正2年（1574年）、徳川家康は寺領76石余りを寄進し、妙立寺を祈願所としました。以後、歴代の将軍家から寺領安堵の朱印が与えられました。家康は宇津山城征伐の際に妙立寺を本陣とし、境内には軍旗を掲げた松があったと記録されています。慶長19年（1614年）に本殿が建立され、その後、延享4年（1747年）に再建されたものが現存しています。

近代

明治5年（1872年）に学制が公布された際、妙立寺は客殿を学校校舎として提供し、地域における日蓮宗の教育普及に貢献しました。明治17年（1884年）には、寺内に吉美村外4か村の戸長役場が設けられ、その後、村役場としても利用されました。明治29年（1896年）には、境内に旗建松碑が建立されましたが、同年、方丈からの出火で客殿などが焼失し、仮校舎として利用されていた吉美尋常小学校も被害を受けました。そのため、一時的に塔頭が小学校の教場として使われました。昭和6年（1931年）には、屋根の茅葺が銅板葺に変更されました。

現代

戦前まで顕本法華宗の本山であった妙立寺は、1941年の宗教合同により日蓮宗に属することとなりました。戦後、一部の寺院が再独立しましたが、妙立寺は什門四本山の一つとして日蓮宗に残りました。戦時中には梵鐘が供出されましたが、昭和25年（1950年）に境内地の無償授与を受け、宝蔵が改築され、昭和29年（1954年）には梵鐘が再鋳造されました。また、鐘楼は戦時中の失火で焼失していましたが、この時に再建されました。昭和35年（1960年）には、彦坂良平によって『妙立寺年譜』が編纂されました。現在、塔頭として正住院と養仙院があります。

伽藍

本堂: 延享4年（1747年）に建立されたもので、正面9間、側面9.5間、建坪約90坪です。1931年に茅葺から銅板葺に改められました。
山門（総門）: 寛文5年（1665年）の再建で、寺内最古の建造物です。四脚門、粽柱、唐様、本瓦葺という特徴を持っています。
鐘楼: 1954年に梵鐘が再鋳されました。鋳物師は富山県高岡市の老子次右衛門（老子製作所）です。
宝蔵
庫裏

文化財

重要文化財（国指定）

紺紙銀界金字法華経（開結共）10巻: 保延四年（1138年）に藤原基衡が父の菩提のために書写させたもので、千部一日教の第62部にあたります。

静岡県指定有形文化財

絹本著色仏涅槃図: 作者不明の涅槃図で、釈迦の袈裟の線に切金が使われています。図の下部中央には関東公方足利持氏の花押があり、持氏のものと認定されています。花押の周辺には「陽山」「道継」の捺印があります。

湖西市指定有形文化財

山門（総門）: 1665年再建。
大黒天立像: 像高26cm、俵直径9cm、背負袋長さ13cm。
今川氏真寺領安堵状
今川氏真判物

口承

湖に沈んだ鐘

永禄11年（1568年）の徳川家康の遠江侵攻の際、酒井忠次率いる徳川軍が妙立寺の梵鐘を船に乗せて宇津山城を攻めましたが、その途中で鐘を湖底に落としてしまったという伝説があります。この鐘は音の良さで知られていたため、味方を鼓舞するために使われたと言われています。

旗立松

宇津山城攻略の際、酒井忠次が妙立寺の松に「緋の旗」を建てたと伝えられています。この松は「旗建松」と呼ばれ、後に記念碑が建立されました。この松の由来には諸説あり、「家康が宇津山城征伐のときに軍旗を掲げた」と記す文献もあります。

旧末寺

日蓮宗は1941年に本末を解体したため、現在では、旧本山、旧末寺と呼びならわしています。

正住院（湖西市吉美）
養仙院（湖西市吉美）
豊立山妙安寺（湖西市太田）
信忠山妙経寺（湖西市新所）
清立山妙源寺（湖西市坊瀬）
安立山妙泰寺（湖西市白須賀）
延龍山妙泉寺（豊橋市二川町）
真浄山當行寺（田原市田原町）
柳橋山法華寺（田原市野田町）
* 白須賀の妙泰寺は日蓮宗を名乗るも、住職は顕本法華宗妙満寺貫主に加歴されています。

豊田家との関わり

トヨタグループで知られる豊田家は、妙立寺の檀家です。大工であった豊田伊吉は、妙立寺の修理や再建に尽力し、功労を表彰されました。また、伊吉は妙立寺に多額の寄付を行い、その信仰心は息子の豊田佐吉にも受け継がれました。豊田佐吉は、妙立寺にある豊田家の墓石を新調しており、告別式には妙立寺の住職も参列しました。妙立寺から豊田家に贈られた掛け軸「百忍千鍛事遂全」は、豊田佐吉記念館に飾られています。現在、豊田家は「豊田佐吉翁記念奨学金」を運営し、湖西市出身の奨学生は妙立寺の豊田家の墓参りを行っています。

交通アクセス

JR東海道線鷲津駅から湖西市コミュニティバス（コーちゃんバス）白須賀鷲津線・鷲津循環線（西回り）にて「市役所」バス停下車後、徒歩10分です。

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