日什

日什（にちじゅう）

日什は、正和3年（1314年）に陸奥国で生まれ、明徳3年（1392年）に没した、南北朝時代の僧侶です。顕本法華宗の開祖として、その名を知られています。幼名は玉千代丸といい、後に権太夫国重と名乗りました。また、玄妙阿闍梨という号でも知られています。

生涯

日什は、陸奥国会津黒川（現在の福島県会津地方）で、鎌倉出身の石堂覚知を父、蘆名盛宗の娘である清玉姫を母として生まれました。

1333年（正慶2年）に比叡山に登り、天台宗の僧侶である慈遍（卜部兼好の兄）に師事し出家しました。この時、名を玄妙と改めました。その後、1352年（文和元年）には、延暦寺の学頭という要職に就き、学僧としての才能を発揮しました。

1372年（応安5年）、会津領主であった蘆名直盛に招かれ、羽黒山東光寺（現在の羽黒山湯上神社の別当寺）の住職となりました。しかし、1380年（康暦2年）には日蓮宗の弘法寺に帰伏し、名を日什と改めました。ところが、その後、再び日蓮宗からの離脱を決意し、独自の道を歩み始めることになります。

1381年（永徳元年）には、帝都での弘法を目指し上洛。関白らと会見し、その働きかけによって後円融天皇から「二位僧都」の位と「洛中弘法の綸旨」を賜りました。この時、日什は朝廷からもその宗教的才能を認められたと言えるでしょう。

翌1382年（永徳2年）には、足利氏満に諌暁を行い、本興寺の住持となりました。さらに、本光寺や玄妙寺を創建するなど、精力的に活動しました。

1389年（康応元年）には、妙満寺を建立し、日什門流という独自の宗派を興しました。この宗派は、日什の教えを基盤とするもので、彼の宗教的遺産として今日に伝えられています。

1391年（明徳2年）には、足利義満にも諌暁を行いました。当時の政治権力者にも臆することなく、自身の信念を貫いたその姿勢は、日什の人物像を特徴づけるものと言えるでしょう。

日什は、1392年（明徳3年）にその生涯を閉じました。彼の残した足跡は、顕本法華宗の開祖として、また、激動の時代を力強く生きた僧侶として、後世に語り継がれています。

日什の思想と影響

日什の思想は、法華経を中心としたものであり、日蓮の教えを基礎としながらも、独自の解釈を加え、顕本法華宗という新しい宗派を形成しました。彼の教えは、当時多くの人々に影響を与え、彼の門下からは多くの僧侶が輩出しました。現在でも、顕本法華宗は日本各地で信仰されており、日什の思想は、日本の仏教史において重要な位置を占めています。

参考文献

鷲尾順敬『日本仏家人名辞書』光融館、1903年、946頁。NDLJP:816939/684。

脚注

鷲尾順敬『日本仏家人名辞書』光融館、1903年、946頁の記述を参照。 (近代デジタルライブラリー上では684コマ目)

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