妙香寺 (横浜市)

妙香寺（みょうこうじ）

神奈川県横浜市中区妙香寺台に位置する妙香寺は、日蓮宗に属する寺院であり、山号は本牧山です。旧本山は大本山中山法華経寺で、君が代の発祥地や日本の吹奏楽の根源としても有名です。

歴史

妙香寺の歴史はかなり古く、弘仁5年（814年）に真言宗の開祖である空海によって、本牧山東海寺として創建されたのが始まりです。創設時の本尊は薬師如来でした。その後、文永元年（1264年）に住職の法印昌香が日蓮聖人に帰依し、日能と名を改めて日蓮宗に転宗、寺号を連昌山妙香寺に変更しました。また、当地には寺号に由来した地名「妙香寺台」が名付けられました。かつては広大な寺領と多くの末寺を有していましたが、改宗以降、末寺は堀之内宝生寺に転属され、寺領も失われました。

応永20年（1413年）頃、日英という世代の住職が中興の祖として再興し、以後は徳川家の保護を受けるようになり、本牧の地に十石を得ました。また、横浜が開港される頃には、山号を本牧山と改称することとなりました。明治時代までは、妙香寺は大規模な寺院として名を馳せ、現在の山手公園もその敷地に含まれていました。この公園は寺の一部を利用して造成され、明治3年（1870年）には日本最初の西洋式公園とされ開園しました。

しかし、妙香寺はその後、大正12年（1923年）の関東大震災や昭和2年（1927年）の火災、さらには昭和20年（1945年）の横浜大空襲によって、3度にわたり伽藍を失うことになります。現在の本堂は昭和56年（1981年）に再建されました。また、1935年（昭和10年）には、『横浜貿易新報』の読者投票で名勝史跡として評価されました。

君が代・吹奏楽発祥の地

歴史的な事実として、明治2年（1869年）に薩摩藩が洋式軍楽隊を創設するため、藩士32名が横浜に派遣されました。彼らは「薩摩バンド」と称され、当寺での合宿中にイギリス軍第10連隊の軍楽隊長であるジョン・W・フェントンから吹奏楽の指導を受けました。これが日本における吹奏楽の始まりと言われています。

翌年の明治3年（1870年）には、山手公園で英軍の軍楽隊と合同で演奏が行われ、同じ年に天覧操練でフェントン作曲の「君が代」が初めて演奏されました。この旋律は現在の国歌とは異なるものでした。1989年（平成元年）には日本吹奏楽指導者協会（JBA）が境内に「日本吹奏楽発祥の地」の記念碑を建立し、その文字は薩摩藩主の島津忠秀によるもので、藩士たちが演奏する姿が彫刻されています。以降、JBAは毎年体育の日にこの曲を演奏する記念演奏会を行い、2019年には日本吹奏楽発祥150年のイベントも開催されました。

境内の施設

妙香寺の境内には、本堂、山門、鐘楼、大黒堂などの重要な施設があり、「日本吹奏楽発祥の地」や「国歌君が代発祥の地」を記す石碑も存在します。歴代住職は日高（開山）、日能（開闢改宗開基）、日英（10世、中興）などが名を連ねています。公式HPでは、初代から現代までの住職の記録が閲覧可能です。

アクセス

妙香寺へのアクセスは、JR東日本根岸線の山手駅から徒歩約15分、みなとみらい線の元町・中華街駅からは徒歩約25分の距離にあります。

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