姑獲鳥

姑獲鳥の伝説

姑獲鳥（こかくちょう）は、中国の古典文献に登場する伝説的な生物であり、その起源は西晋時代の博物誌『玄中記』や明代の薬物書『本草綱目』などに見られます。日本にも影響を与えたこの生物は、江戸時代の百科事典『和漢三才図会』にも記されたことがあります。

姑獲鳥の特徴

姑獲鳥は、「夜行遊女」や「天帝少女」、「乳母鳥」、「鬼鳥」といった名前でも知られています。その本質は鬼神の一種とされ、多くの人間の生命を奪う存在として恐れられています。この生物は特に夜間に活動し、幼い子供を狙う恐ろしい怪鳥として描かれています。独特の鳴き声は幼児の哭き声に似ており、そのために親たちは恐れを抱くことになります。

伝説によれば、姑獲鳥は中国の荊州地方に多く出現し、毛を身にまとっているときは鳥の姿をとるものの、毛を脱ぎ捨てると女性の姿に変わると言われています。このため、他人の子供を奪って自分の子供として育てる、という奇妙な習性を持っています。夜に干された子供の着物が見つかると、それに血で印をつけ、印を付けられた子供は魂を奪われ、無辜疳（むこかん）という病気にかかるとされています。

これらの特徴は、古代中国の他の神話的存在とも共通しています。例えば、東晋の文学作品『捜神記』に出てくる「羽衣女」や、古典『楚辞』に登場する神女「女岐」との関連が指摘されており、これらの伝承が統合されて姑獲鳥の物語が形成されたとされています。

また、唐代の文学作品『酉陽雑俎』では、姑獲鳥が出産時に亡くなった女性が化けた存在であるとも語られており、これが『本草綱目』でも支持されています。

日本の伝承における姑獲鳥

日本の伝承にも姑獲鳥に関連する話が存在します。特に、茨城県には「ウバメトリ」という妖怪に関する伝説があります。この妖怪は、夜に干された子供の着物を見つけては、自らの子供のものだと思い込み、その着物に母乳で印を付けてしまいます。この母乳には毒が含まれているとも言われており、姑獲鳥の伝承が日本の妖怪文化に影響を与えたとされています。

江戸時代初頭には、日本の妖怪「産女」と中国の姑獲鳥が同一視され、一部では「姑獲鳥」と書いて「うぶめ」と読まれるようになりました。これは主に、産婦に関する伝承が姑獲鳥と混同されたためと考えられています。

結論

姑獲鳥は、古代からの伝承が結びついた神秘的な存在であり、中国と日本の文化の交差点に位置しています。これらの伝説は、今日でも多くの人々の興味を引き続け、妖怪や怪異に対する理解を深める手助けとなっています。姑獲鳥の物語は、子供に対する母親の愛情や、夜の恐怖を象徴する要素を含み、各地で独自の進化を遂げています。

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