姨捨棚田

姨捨棚田（おばすてたなだ）

概要

姨捨棚田は、長野県千曲市八幡に位置する、古くから「田毎の月」の名所として知られる美しい棚田です。この棚田は、「姨捨山（冠着山）」の名を冠していますが、実際には三峯山の東側に広がる千曲高原の扇状地に造成されています。学術的には「姨捨土石流堆積物地形」と呼ばれるこの地形は、約7万年前から約6万年前の三峯山の火山活動によって形成されたと考えられています。

地形の形成

姨捨棚田の基盤となる緩傾斜地形の形成には、主に二つの説があります。

三峯火山泥流説： 約7万年前から6万年前、三峯山の東山腹で発生した大規模なガス爆発により、山体の一部が崩壊し、その土石流が低地に押し出されて形成されたという説。
旧崩積土再移動説： 約10万年前に形成された旧崩積土が、地殻変動によって再移動し、約1万3000年前と3000年前の二度にわたる地殻変動によって現在の地形になったという説。

田毎の月

棚田に水を張った水田に映る月は、古くから「田毎の月」として多くの人々に愛されてきました。特に長楽寺の持田である四十八枚田に映る月は、その美しさで知られ、地図上でも名所として示されています。鎌倉時代の歌人・藤原家隆もこの風景を歌に詠み、その美しさを称えました。


「田毎の月」の歴史は古く、江戸時代に千枚田が形成される前から、上杉謙信の願文にも「祖母捨山田毎潤満月の影」と記されており、16世紀には既にその美しさが知られていたことがわかります。安土桃山時代には、豊臣秀吉が「信濃更科」を日本三大名月の一つとして挙げるなど、広くその名が知れ渡っていました。

文化財としての価値

1999年、「姨捨（田毎の月）」として国の名勝に指定されました。これは日本で初めて文化財に指定された農耕地です。その後、上姪石地区も追加指定され、同年には「日本の棚田百選」にも選出されました。2010年には、名勝指定地に追加選定地域を合わせて「姨捨の棚田」として重要文化的景観に選定され、その文化的価値が広く認められています。

また、棚田の下部地域では、弥生時代の棚田が発掘されており、周辺には古墳も点在することから、この地で一定の勢力を築いた人々の存在が推測されています。

水利

かつては湧き水が水源でしたが、現在は千曲高原にある人工のため池（大池）の水と、千曲川の水を併用しています。

文化財指定

姨捨（田毎の月）： 国の名勝。長楽寺境内、四十八枚田、姪石付近の棚田が指定対象。
姨捨の棚田： 名勝指定地を含む64.3ヘクタールが重要文化的景観として選定。

関連情報

建部大垣: 国学者、歌人。
堀内文次郎: 写真家。
姨捨駅： JR篠ノ井線の駅で、駅からの景観は「JR三大車窓」の一つに数えられます。
姨捨SA： 「日本の夜景100選」に選ばれています。
国道403号沿い千曲川展望公園
冠着橋: 千曲川にかかる橋。
長楽寺： 棚田の近くにある寺院。
姨捨山冠着宮遙拝所
日本国指定名勝の一覧
うばすてやま： 棄老伝説にまつわる民話。
* 川中島： 古戦場。

姨捨棚田は、美しい自然景観と豊かな歴史、文化が織りなす、訪れる人々を魅了する場所です。

もう一度検索