姫の前

姫の前（ひめのまえ）

姫の前は、鎌倉時代初期に生きた比企一族の女性です。比企朝宗の娘として生まれ、鎌倉幕府の重鎮である北条義時と、公家の源具親という二人の有力者の妻となりました。彼女の生涯は、当時の政治情勢と深く関わり、数奇な運命を辿ります。

生涯

姫の前は、源頼朝の信頼厚い女官として仕えていました。『吾妻鏡』には、彼女が大変美しく、並ぶ者のない権勢を持っていたことが記されています。北条義時は彼女に熱烈な恋文を送りましたが、なかなか振り向いてもらえませんでした。見かねた頼朝が、義時に離縁しないという起請文を書かせ、二人の仲を取り持ったと伝えられています。

建久3年（1192年）に義時と結婚した姫の前は、建久4年（1193年）に朝時を、建久9年（1198年）に重時を産みます。しかし、建仁3年（1203年）に比企能員の変が起こり、実家である比企氏が義時率いる軍勢によって滅ぼされるという悲劇に見舞われます。

『明月記』によれば、姫の前は義時と離別後、上洛して源具親と再婚し、輔通を産んだとされています。輔通は元久元年（1204年）生まれであることから、比企氏滅亡後まもなく離縁、再婚したと考えられます。また、具親の次男・源輔時も姫の前の子供であると見られています。

一方、義時の妾である伊佐朝政の娘が男子（有時）を産んだ際、義時の邸宅で手厚いもてなしがなされたことから、姫の前がすでに離縁していた可能性も指摘されています。

承元元年（1207年）3月29日、姫の前は京都で亡くなりました。『明月記』には、彼女が産後の肥立ちが悪く亡くなったことが記されています。

関連作品

姫の前は、その波乱に満ちた生涯から、数々のテレビドラマで描かれています。

草燃える（1979年、NHK大河ドラマ） - 演：坂口良子、役名：野萩（のはぎ）
鎌倉殿の13人（2022年、NHK大河ドラマ） - 演：堀田真由、役名：比奈（ひな）

参考文献

* 森幸夫『北条重時』吉川弘文館〈人物叢書〉、2009年9月。

姫の前は、鎌倉時代の激動期を生き抜いた女性として、その名が歴史に刻まれています。彼女の生涯は、権力闘争、愛憎、そして家族の絆といった、様々な要素が複雑に絡み合った時代を映し出しています。

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