姫川信号場

北海道茅部郡森町に位置する姫川信号場は、北海道旅客鉄道（JR北海道）函館本線上に存在する施設です。現在は列車の行き違いや待避に用いられる信号場ですが、その歴史は変遷に富んでいます。電報略号は「ヒメ」と定められています。かつて旅客営業を行っていた時期には、駅番号「H63」、事務管理コード「▲140113」が付与されていました。

歴史

姫川信号場の歴史は、1913年（大正2年）8月1日に国有鉄道の「姫川信号所」として開設されたことに始まります。その後、1922年（大正11年）4月1日には「姫川信号場」へと名称が改められました。第二次世界大戦後、1949年（昭和24年）6月1日の日本国有鉄道（国鉄）発足に伴い、国鉄の施設となります。特筆すべきは、信号場として設置されたこの場所に、1951年（昭和26年）5月19日には仮乗降場が設けられ、旅客の取り扱いが始まったことです（正確な日付については諸説あり）。しかし、1969年（昭和44年）11月26日には桔梗駅と森駅間のCTC化（列車集中制御装置の導入）に伴い、無人施設となりました。

国鉄が分割民営化された1987年（昭和62年）4月1日、姫川信号場はJR北海道に継承されるとともに、正規の駅である「姫川駅」へと昇格しました。駅としての機能を持つことになったことで、1990年（平成2年）3月10日には営業キロが設定され、1991年（平成3年）12月24日には駅舎の改築も行われています。しかし、時代の流れとともに列車の停車本数は減少し、2000年（平成12年）3月11日には快速「アイリス」の下り列車の廃止に伴い、普通列車のみが停車する駅となりました。また、2007年（平成19年）10月1日からは駅ナンバリング「H63」が導入されました。

その後、利用者の減少が顕著となり、2016年（平成28年）6月2日には他の複数の駅と共に、JR北海道から地元自治体に対し、2017年3月のダイヤ改正での駅廃止（信号場化）の意向が伝えられたことが報道されました。そして、その意向通り、2017年（平成29年）3月4日のダイヤ改正をもって旅客扱いが廃止され、再び「姫川信号場」として、もっぱら信号業務のみを行う施設となりました。駅としての役目を終えた姫川は、開設時の信号場に戻った形です。

名称の由来

信号場名は、その所在地である森町字姫川という地名に由来しています。この地名は、1939年（昭和14年）に森町内で実施された字名整理の際に成立した比較的新しいものです。地名の由来については諸説あり、太田（2004）の著書では、近くを流れる尾白内川がかつて「おとなしい川」、すなわち「姫川」と呼ばれていた可能性が推測されています。

構造

現在の姫川信号場は、単線区間における列車の行き違いを可能とする2線構造を有しています。主に普通列車と特急列車がこの施設で交換または追い越しを行っています。かつて駅として旅客扱いを行っていた末期には、相対式ホームが2面2線設けられていましたが、旅客扱いが終了した後はこれらの乗降設備は撤去されています。駅として機能していた頃は、互いのホームは中央に設置された構内踏切によって連絡されており、この踏切には列車接近時に自動音声アナウンスと共に作動する遮断機が備えられていました。ホームの構造にも特徴があり、下り線側のホームは土盛りで比較的長く、一方の上り線側のホームはコンクリート製で短い構造となっていました。また、安全側線も設置されており、1993年（平成5年）時点では上り線側（駅舎側）の旭川方面寄りに、転轍機が撤去された側線が1本確認されていました。

姫川駅として営業していた当時は、森駅が管理する無人駅でしたが、有人信号場時代からの駅舎が今も残存しています。駅舎は線路の北側、旭川方面に向かって右手側の高台に位置しており、線路に接する上り線ホームからは階段を上る必要がありました。建物自体は古いものですが、一部が改築されています。かつてはホームまで張り出す逆L字型をしており、撤去された部分には背の高い基礎部分が現在も残っています。駅舎の待合室部分の隣には、保線作業員のための事務室が設けられていました。駅舎内にトイレがあり、旅人が書き残す駅ノートも置かれていました。また、駅舎の隣には電気施設のための別棟の建屋があります。

利用状況

駅として機能していた末期の利用状況を見ると、2011年から2015年（平成23年から平成27年）の期間に実施された乗降人員調査（いずれも11月の特定の調査日）の平均は、「1名以下」という極めて少ないものでした。この利用者数の減少が、信号場化の一因となったと考えられます。

周辺

信号場周辺には、施設からおよそ0.5キロメートルほど進んだ場所に養蜂場や鉄のアート工房があります。また、国道5号線が近くを通っており、沿道には函館バスの「姫川小学校前」停留所があります。道央自動車道の森インターチェンジも比較的近い位置にあります。

隣接施設

北海道旅客鉄道（JR北海道） ■函館本線
駒ヶ岳駅 (H65) - ~~東山駅~~ (H64) - （姫川信号場） - ~~（森川信号場）~~ - 森駅 (H62)
※打ち消し線は既に廃止された駅および信号場を示します。

参考文献・関連項目

土屋武之「函館本線485.4km+α 函館から「山線」を経て通勤電車区間へ」『鉄道ジャーナル』第53巻第2号（通巻628号）、成美堂出版、2019年2月1日、20-31頁。
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