姫路市歌

姫路市歌と旧町村の自治体歌

姫路市歌は、兵庫県姫路市が1949年（昭和24年）に定めた市の歌です。作詞は河西新太郎氏、作曲は須藤五郎氏が手掛けました。本記事では、この姫路市歌に加え、かつて姫路市に編入された町村が制定していた自治体歌についてもご紹介します。

姫路市歌について

姫路市歌は、1949年（昭和24年）に迎えた市制60周年を記念して制作されました。歌詞は一般公募によって集められ、同年8月18日の記念式典で初めて発表され、演奏が行われました。

歌詞には、制定された時期が戦後間もない頃であったことを反映し、「平和」「自由」「自治」「文化」「民主」といった、復興や新しい社会の理念を象徴する言葉が多く含まれています。これは、同時期に制定された西宮市歌など、他の多くの自治体歌にも見られる特徴です。一方で、地域の情景も織り込まれており、1番では市のシンボルである姫路城が、2番では播磨灘が歌われています。

現在、姫路市歌は市の行事、特に仕事始めに演奏される習慣があります。また、市が毎年発行する『市政の概要』にも、歌詞と楽譜が見開きで掲載されています。かつては市の公式サイトでの紹介がありませんでしたが、2016年（平成28年）6月の市議会定例会で「市歌の存在が市民に知られていないのでは」という質問が提起されたことを受け、同年8月17日からは、1989年（平成元年）に発表された市民愛唱歌「夢ある姫路（まち）」とともに、市のサイトで紹介されるようになりました。

姫路市に編入された旧町村の自治体歌

姫路市への編入に伴い、一部の旧町村が独自に定めていた自治体歌やそれに類する楽曲についても、触れておきます。これらの楽曲は、合併協議での申し合わせにより、現在も「地域の歌」として引き継がれています。

安室村歌（やすむろそんか）
1909年（明治42年）に飾磨郡安室村によって制定されました。作詞は細田吉次氏、作曲は西川洋氏です。兵庫県内で最も古い自治体歌の一つとされており、1910年（明治43年）に行われた皇太子（後の大正天皇）行啓記念碑の除幕式で斉唱された記録が残されています。また、安室村立安室尋常小学校（現在の姫路市立安室小学校）では、開校時に校歌がなかったため、村歌が代用曲として歌われていたと伝えられています。

網干町歌（あぼしちょうか）
1928年（昭和3年）に揖保郡網干町が定めた町歌です。著名な詩人である北原白秋氏が作詞を、作曲家として名高い山田耕筰氏が作曲を手掛けました。当時の網干尋常高等小学校（現在の姫路市立網干小学校）の校長が、知人を介して白秋氏に作詞を依頼したという経緯があります。白秋氏自筆の原稿が長らく同校で保管されていましたが、校舎建て替え時の移転などを経て一時所在不明となり、2008年（平成20年）に再発見されました。あぼしまち交流館の前には、この町歌の歌碑が建立されています。

香寺町町歌（こうでらちょうちょうか）
1975年（昭和50年）7月、神崎郡香寺町が町民音頭「香寺音頭」と同時に制定した町歌です。作詞は山田護氏、作曲は飯島豊年氏。2006年（平成18年）の姫路市への編入後も、「地域の歌」として継承されています。

夢前町歌（ゆめさきちょうか）
1968年（昭和43年）1月に飾磨郡夢前町が制定した町歌です。作詞は中上学氏、作曲は秋月直胤氏。こちらも2006年（平成18年）の姫路市への編入後、「地域の歌」として継承されています。

輝く未来 安富町（かがやくみらい やすとみちょう）
宍粟郡安富町が1972年（昭和47年）に制定した町歌です。作詞は中川美恵子氏、補作はごとうとしのぶ氏、作曲は桑原美智雄氏。2006年（平成18年）の姫路市への編入後、「地域の歌」として継承されています。

恋港いえしま（こいみなといえしま）
飾磨郡家島町が制定した町歌です。作詞は島田陽子氏、作曲は池田八声氏。この楽曲は、その表題や曲調から演歌の要素が強く、観光客誘致のためのイメージソングとして制作されたという側面を持ちます。2006年（平成18年）の姫路市への編入後、「地域の歌」として継承されています。

これらの自治体歌は、それぞれの地域で長く親しまれてきた歴史を持ち、合併を経た今もなお、その地域独自の文化や記憶を伝える大切な役割を果たしています。

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