娑葛

娑葛（さかつ）

娑葛（? - 709年）は、8世紀初頭に活躍した突騎施（テュルギシュ）部の首長です。父は烏質勒（ウーチル）で、彼からその地位を受け継ぎました。

生涯

706年、父である烏質勒の死後、娑葛は嗢鹿州都督・左驍衛大将軍に任じられ、父の爵位である懐徳郡王を継承しました。当時の兵力は30万を誇りました。中宗皇帝は、十姓可汗の阿史那懐道に使節を持たせて娑葛を冊立させ、金河郡王に改め、後宮の女性を4人与えました。

707年、娑葛は使者を派遣して謝意を表明しました。中宗皇帝は宮殿で使者を迎え、労をねぎらい、贈り物をしました。しかし、まもなくして娑葛は、父の配下であった武将の闕啜忠節（ケチュ・チュンチェ）と対立し、激しい争いを繰り広げることになります。

708年、娑葛は闕啜忠節の罪を朝廷に訴え、彼を都に連行するよう求めました。当時、兵部尚書の宗楚客（ソウソカク）が朝廷で勢力を振るっていたため、闕啜忠節は密かに使者を送り、宗楚客に金700両の賄賂を贈って入朝を免れようとしました。さらに、吐蕃を誘って娑葛を攻撃させ、報復を目論みます。宗楚客は御史中丞の馮嘉賓（フウカヒン）を使節として派遣し事態の収拾を図りますが、馮嘉賓が闕啜忠節とやり取りした書簡は、娑葛の兵士に奪われてしまいます。同年11月、事の顛末を知った娑葛は兵を起こし、安西の撥換（亀茲）・焉耆・疏勒を襲撃し、闕啜忠節を生け捕り、馮嘉賓を殺害しました。自ら可汗を称した娑葛は、弟の遮弩（シャド）に兵を率いさせ、長城一帯で略奪を行わせました。娑葛は安西都護の牛師奨（ギュウシショウ）と火焼城で戦い、牛師奨を討ち取り安西を陥落させ、四鎮路を封鎖しました。娑葛は宗楚客の首を要求する上奏文を送りましたが、大都護の郭元振（カクゲンシン）は娑葛の行状を擁護し、罪を赦免するよう進言しました。中宗皇帝は娑葛の罪を赦し、彼を十四姓可汗に冊立しました。

709年7月、娑葛は使者を派遣して唐に降伏しました。中宗皇帝は娑葛を驍衛大将軍・衛尉卿・金河王・帰化可汗（欽化可汗）に任じ、守忠という名を与えました。当時、娑葛は弟の遮弩とその部を分割統治していましたが、遮弩は自身の部衆が少ないことを不満に思い、兄に反旗を翻して東突厥の默啜（ボクテツ）に帰順しました。遮弩は道案内を買って出て、兄を攻撃することを願い出ました。默啜は遮弩をしばらく滞在させた後、「お前は兄弟仲が良くない。そのような状態で、どうして私に心から仕えることができようか？」と言い、2人とも殺害してしまいました。默啜の軍が帰還した後、娑葛の部将であった蘇禄（ソロク）が残党を集結させ、自ら可汗となりました。

娑葛の生涯は、当時の国際関係と権力闘争の複雑さを物語っています。

脚注

参考資料

『旧唐書』本紀第七、列伝第一百四十四下
『新唐書』本紀第四、列伝百一四十下
* 『資治通鑑』巻第二百九、巻第二百八

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