字様書

字様書（じようしょ）とは

字様書とは、唐代において漢字の異体字を整理し、正字を定めて標準字体の筆画を示した書物のことです。字様書を中心とした唐代の文字学は、字様の学・字様学と呼ばれています。

字様書の成立背景

唐代初期、南北朝時代の戦乱によって漢字の字体に乱れが生じていました。篆書や隷書との整合性が取れない俗字が横行し、儒教の経典である五経の写本にもその影響は及んでいました。

この状況を憂慮した太宗は、顔師古に五経の文字の校勘を命じ、その成果として「五経定本」が作成されました。その後、孔穎達が「五経定本」をもとに、五経の権威的な注釈書である『五経正義』を編纂しました。

顔師古は五経を校勘する過程で、各文字の異体字を別紙に書き出し、楷書の字体を校定しました。これが後に『顔氏字様』として伝えられるようになったとされています。この『顔氏字様』が字様書の起源とされていますが、残念ながら現在には伝わっていません。

武則天の時代には、顔師古の従孫である顔元孫が、科挙の答案に用いるべき標準字体を示した『干禄字書』を著しました。この書物では、異体字を正字・俗字・通字の三つに分類し、それぞれの用途を明示しました。

その後、安史の乱によって再び五経のテキストに乱れが生じました。代宗の時代には張参が五経の文字を校勘して『五経文字』を著し、文宗の時代には唐玄度が九経について『五経文字』を補って『新加九経字様』を著しました。これらの二書は、唐の開成石経に『五経正義』と共に刻まれ、現在も西安市の碑林で見ることができます。

主な字様書

以下に主な字様書をまとめます。

顔師古『顔氏字様』
字様書の起源とされる書物ですが、現存していません。
杜延業『群書新定字様』
詳細な情報は不明です。
顔元孫『干禄字書』
異体字を正字・俗字・通字に分類し、それぞれの用途を示した書物です。
欧陽融『経典分毫正字』
詳細な情報は不明です。
唐玄宗『開元文字音義』
文字の字形だけでなく、音義も合わせて解説した書物です。
張参『五経文字』
五経の文字を校勘した書物です。
唐玄度『新加九経字様』
『五経文字』を補い、九経について字様を定めた書物です。



字様書は、唐代における漢字の標準化に重要な役割を果たしました。これらの書物を通じて、漢字の字形が整理され、後世に受け継がれていくこととなりました。

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