孟珙

孟珙（もう きょう）

孟珙（1195年 - 1246年）は、南宋時代の武将であり、字は璞玉（ほうぎょく）。吉国公に叙せられ、諡号は忠襄。随州棗陽県（現在の湖北省棗陽市）の出身で、本貫は絳州正平県。金とモンゴル帝国の侵攻から南宋を守り抜いた英雄として知られています。

生涯

孟珙は、岳飛の配下として金と戦った孟安を曾祖父に持ち、父の孟宗政から2万の私兵を受け継ぎました。前半生は不明な点が多いものの、南宋の軍人貴族として順調に昇進し、1234年には江陵府副制置使に任じられています。

金の滅亡とモンゴルとの戦い

1232年の三峰山の戦いで主力を失った金に対し、孟珙は国境守備軍を巧みに殲滅し、金領内に侵入。北西から攻勢をかけていたモンゴル軍に補給を行い、金の滅亡に貢献しました。金滅亡後、モンゴルとの盟約が成立し、モンゴル軍が北方に引き上げると、皇帝理宗は中原奪回を目指し河南への出兵を決定（端平入洛）。孟珙は史嵩之と共にこの無謀な計画に反対しましたが、趙葵率いる軍が北伐を敢行。しかし、南宋軍が洛陽や開封を奪回したことに激怒したモンゴル軍が南下を開始し、孟珙は手勢を率いてモンゴル軍を足止めし、補給を断たれた友軍の壊滅を阻止しました。

南宋防衛の要

1235年、モンゴルは南宋の背信に応じ南伐を開始。四川と京湖方面から侵攻を受け、南宋は混乱に陥りましたが、孟珙はクウン・ブカ率いるモンゴル軍を破り、戦線を安定させました。その後も巧みな防御戦を展開し、敵に出血を強いました。この功績により、京西・湖北路安撫制置使（京湖方面の軍司令官）に昇進し、事実上南宋の防衛を一手に引き受けることになります。四川に敵兵が侵入すれば援軍を送り、敵の攻勢を察知すると先手を打つなど、八面六臂の活躍でモンゴルの猛攻を食い止めました。彼の指揮下に入ってから戦線は安定し、南宋は優勢を取り戻し、モンゴルはオゴデイの時代に南伐を諦めざるを得ないほど状況は改善されました。

内政手腕と晩年

孟珙は、戦乱で荒れ果てた四川や京湖に屯田を導入し、難民対策と生産力の回復に尽力。国境守備軍を再編成し、各戦区が互いに支援できる体制を整えるなど、高度な戦略家としての能力も示しました。その晩年は、皇帝から民衆に至るまで、国家の守護神として崇敬を受けました。しかし、1244年に宰相の史嵩之が失脚すると、失意のうちに軍務の辞職を求め、検校少師・寧武軍節度使を授けられ江陵の治所へ引退しました。この時、「30年にわたって中原の人らを収拾したが、今は志を広げられない」と複雑な心境を吐露しています。

1246年9月、孟珙は死去。彼の死は、モンゴルにとって大きな障害を失ったことを意味し、南宋にとっては国の護りを失ったことを意味しました。彼が構築した国境の防衛線はその後も機能し続け、南宋が30年以上も延命できたのは孟珙の遺産によるところが大きいと言えるでしょう。

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