宇山日出臣

宇山日出臣：新本格ミステリの立役者

宇山日出臣（うやま ひでお／ひでおみ、1944年4月9日 - 2006年8月3日）は、日本の文芸編集者であり、本名を宇山秀雄といいます。彼は、戸川安宣とともに、ミステリー小説のジャンル「新本格」の仕掛け人として広く知られています。

生涯と業績

京都市出身の宇山は、同志社大学を卒業後、三井物産に入社しますが、中井英夫の『虚無への供物』を文庫化したいという強い思いから、2年後の1969年に講談社へ転職します。入社後すぐに星新一のもとを訪れ、1971年に『エヌ氏の遊園地』を講談社文庫から刊行しました。1974年3月には、『虚無への供物』を講談社文庫のAXシリーズ（日本SF・ミステリのレーベル）の最初の作品として刊行し、同年には海外SF・ミステリのレーベルであるBXシリーズも創刊しました。

当初はSFに強い編集者として知られ、星新一との関係も深く、星新一ショートショート・コンテストの発案者でもありました。1981年からは雑誌『ショートショートランド』の編集長を務め、SF専門の編集部である「講談社・文芸第三編集部」に所属していました。この編集部は、後に新本格ミステリでその名を知られるようになります。

その後、講談社ノベルスの編集者としてミステリーを担当するようになった宇山は、1987年から新人発掘に力を注ぎます。島田荘司が推薦文を書き、宇山が伴走するかたちで、綾辻行人、法月綸太郎、我孫子武丸、歌野晶午といった才能をデビューさせ、「新本格」ムーブメントを巻き起こしました。「宇山日出臣」というエディターネームも、島田荘司によって名付けられました。また、1988年には小野不由美のデビューからの担当者となり、その才能を開花させました。

講談社文芸図書第三出版部（通称文三）部長として、メフィスト賞を創設し、京極夏彦、森博嗣、舞城王太郎、西尾維新らの発掘にも関わりました。晩年には部長を退いていましたが、ミステリーランドを企画するなど、後進の育成にも尽力しました。太田克史をはじめとする多くの編集者にも多大な影響を与え、その功績は高く評価されています。

2004年には、本格ミステリ大賞特別賞を戸川安宣とともに受賞しました。2005年に講談社を定年退職し、2006年5月21日には第22回うつのみやこども賞で、ミステリーランドが3年連続で受賞し、企画者として特別賞を受賞し表彰されました。在職中から酒豪として知られていましたが、2006年8月3日に肝硬変のため逝去しました。

2011年10月8日には、有栖川有栖夫妻の主催で「故・宇山さんを偲ぶコンサート」が都内で開催され、多くの人々が彼の死を悼みました。2022年3月には、宇山と仕事をした多くのクリエイターたちによる追悼文を集めた本『新本格ミステリはどのようにして生まれてきたのか？』（太田克史・編、星海社発行、講談社販売）が刊行され、彼の功績が改めて称えられました。

宇山日出臣は、日本のミステリー界に多大な影響を与えた編集者として、その名は永遠に刻まれることでしょう。

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