宇都宮則綱 (政治家)

宇都宮 則綱（うつのみや のりつな）

大正から昭和にかけて、実業家そして政治家として活躍した人物です。1889年（明治22年）5月1日、現在の大分県杵築市にあたる速見郡八坂村に、酒造業を営む家の長男として生を受けました。旧制大分県農学校（後に大分県立三重農業高等学校となり閉校）で学び、卒業後、実家の家業とは別に、速見郡朝日村（現在の別府市）で兄が経営していた酒店を引き継ぎ、実業家としての道を歩み始めました。

別府の地で事業を展開する中で、宇都宮則綱は観光都市としての別府の可能性に着目しました。当時、別府の観光開発を牽引していた油屋熊八や、梅田凡平といった同志たちと共に「別府宣伝協会」を結成し、別府温泉の魅力を全国に向けて積極的に発信する活動を展開しました。この活動は、現在の別府が日本有数の温泉観光地として認知される基盤を築く上で重要な役割を果たしたと言えます。

実業家としては、酒店経営に加え、豊洋水産の取締役会長や、別府の有名な観光地である鬼山地獄の社長なども務め、多角的な事業を展開しました。その手腕は地域経済の振興にも貢献しました。

実業での成功を基盤に、政治の世界にも足を踏み入れます。1924年（大正13年）には別府市会議員選挙に当選し、市議会議員として市政に関わることになります。その信頼と実績から、別府市会の議長にも就任しました。地方自治の要職を歴任する中で、1943年（昭和18年）には全国の市議会議長が集まる全国市会議長会（現在の全国市議会議長会）の会長という要職に就任し、全国的な視点から地方自治の発展に寄与しました。また、1935年（昭和10年）には大分県会議員に選出され、1期務めて県政にも関与しました。

第二次世界大戦後、日本の政治体制が大きく変化する中で、国政への挑戦を始めます。1946年（昭和21年）4月に行われた第22回衆議院議員総選挙では、大分県全県区から日本進歩党公認候補として立候補しましたが、惜しくも当選には至りませんでした。しかし、翌1947年（昭和22年）4月の第23回衆議院議員総選挙においては、大分県第2区から民主党公認で再び立候補し、見事に当選を果たしました。これにより、宇都宮則綱は衆議院議員として国政の舞台に立つことになり、1期にわたりその職を務めました。

衆議院議員としての任期を終えた後の1949年（昭和24年）1月、第24回衆議院議員総選挙にも引き続き立候補しましたが、この時は再び落選の結果となりました。これを機に、宇都宮則綱は政治活動から身を引き、政界を引退しました。

政界引退後は、再び実業家として別府に戻り、鬼山ホテルの経営に専念しました。長年にわたる実業および政治における功績が認められ、1971年（昭和46年）春の叙勲において、勲四等瑞宝章を受章しました。1973年（昭和48年）5月31日に84歳でその生涯を閉じました。没後、その功績を称えられ、従五位に叙されました。

著書に、自身の生涯を振り返った『回顧七十年』（河村豊編、1965年）があります。親族としては、三男の宇都宮秀綱氏が大分県議会議員を務めています。

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