守田勘彌 (12代目)

十二代目 守田勘彌（1846年 - 1897年）は、幕末から明治にかけての歌舞伎界を牽引した立役者です。歌舞伎役者としての才能に加え、興行師、狂言作者としても手腕を発揮し、多岐にわたる功績を残しました。

本名は守田 壽作。屋号は喜の字屋、俳名は是好。狂言作者としては古河新水の名前も用いました。もともとは歌舞伎役者・中村翫左衛門の次男として生まれ、中村次三郎と名乗っていました。18歳で守田家の養子となり、守田勘次郎と改名。翌年には十二代目守田勘彌を襲名し、守田座の座元となりました。

勘彌の功績として特筆されるのは、守田座を猿若町から新富町へ移転させ、新劇場を開場させたことです。新富座と改称したこの劇場で、九代目市川團十郎、五代目尾上菊五郎、初代市川左團次といった名優たちを招聘し、歌舞伎の黄金時代を築き上げました。1887年には、井上馨邸で明治天皇を迎えて初の天覧歌舞伎を催し、團十郎らと共にプロデューサーとして成功に導きました。

また、歌舞伎座が開場した際には、中村座、市村座、千歳座と連携して「四座同盟」を結成し、歌舞伎座への役者出演を妨げるなど、興行面での手腕も発揮しました。その後、内紛で混乱した歌舞伎座に座頭として迎えられ、その経営を立て直すなど、その才能は傑出していました。

勘彌は、伝統を守るだけでなく、歌舞伎の近代化にも尽力しました。西南戦争のルポルタージュ劇や西洋演劇の翻訳劇、改良演劇の上演にも力を入れ、新たな観客層を開拓しました。伝統と革新を融合させることで、歌舞伎の可能性を広げようとしたのです。

1897年、勘彌は胃癌のため52歳で死去しました。軍医の松本順と親交が深く、実子には七代目坂東三津五郎、十三代目守田勘彌、三代目板東玉三郎（五女）、四女みきの子には十四代目守田勘彌がいます。彼らは、勘彌の遺志を受け継ぎ、歌舞伎界の発展に貢献しました。

勘彌の生涯は、大槻如電の『第十二世守田勘弥』や木村錦花の『守田勘彌』に詳しく記されています。これらの書籍を通じて、彼の功績や人物像に触れることができます。

十二代目守田勘彌は、歌舞伎界に多大な影響を与えた人物として、今もなお多くの人々に敬愛されています。彼の興行手腕、近代化への貢献は、歌舞伎の歴史において重要な位置を占めています。

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