守護請

守護請（しゅごうけ）とは

守護請とは、室町時代に守護が荘園領主や知行国主から荘園や公領の年貢納入を請け負う制度のことです。この制度は、守護が国内の荘園や公領に対する支配を強化していく上で、重要な役割を果たしました。守護請は、請所という形態の一つであり、守護による荘園支配を推し進める要因となりました。

守護の荘園支配形態

室町時代の守護による荘園支配の形態は、大きく分けて以下の3つがありました。

1. 荘園経営委任型：荘園の実際の経営は荘園領主に任せ、そこから得られる余剰生産物を守護が受け取る方式。
2. 荘園分割支配型：荘園を分割し、その一部を直接守護が支配する方式。
3. 年貢請負型：荘園領主に対して一定額の年貢を納めることを約束し、荘園の支配を請け負う方式。

このうち、1と2が半済（はんぜい）と呼ばれ、3が守護請と呼ばれました。

守護請の沿革

鎌倉時代から室町時代へ

鎌倉時代から、武士による荘園や公領への侵出が始まり、時代が進むにつれてその度合いは激しくなりました。荘園領主や知行国主は、収入を確保するために、地頭に一定額の年貢納入を義務付ける代わりに、現地の荘園や公領の支配を任せる地頭請を行うようになりました。このような請負が行われた荘園や公領を請所と呼びます。しかし、地頭請所では年貢の未納が頻発し、武士による荘園や公領への侵出はさらに進むことになりました。

室町幕府による守護の権限強化

鎌倉時代の守護には、大犯三ヶ条の検断権と大番役の指揮監督権しか与えられていませんでしたが、室町時代に入ると、室町幕府は守護に対して、刈田狼藉取締権、使節遵行権、半済給付権、闕所地処分権、段銭徴収権など、国内の荘園や公領へ統治的・経済的な支配を及ぼせる様々な権限を与えるようになりました。これらの権限を背景に、守護は守護使を荘園や公領へ派遣し、段銭や兵糧、人夫などを徴発するようになりました。また、国衙の機能を実質的に吸収し、国衙が支配する公領を自らの支配下に組み込みました。

守護請の成立

こうした守護の動きに対し、荘園領主は幕府から守護使不入権の承認を得るなどの対抗策を講じましたが、荘園領主の多くは京都に在住しており、遠隔地にある荘園への支配力はほとんど及んでいませんでした。在地の地頭や国人、荘官の中には、守護の被官となる者もおり、荘園領主の支配権は守護に侵害される傾向にありました。そして、鎌倉時代の地頭請と同様に、守護が一定額の年貢納入と荘園支配を請け負う守護請が行われるようになりました。守護が積極的に幕府に働きかけて守護請の権利を獲得することもあれば、守護との紛争や訴訟で疲弊した荘園領主側から守護請を承認することもありました。守護請は守護本人だけでなく、守護代が行うケースもありました。

守護請の実態と影響

守護請の一例として、備後国の高野山領大田荘の例があります。1402年、備後国守護の山名氏が将軍から下地知行権の公認を受け、年1000石を高野山に納入する条件で守護請となりました。元々、高野山が大田荘から得る年貢は年1800石とされていました。しかし、山名氏からの年貢はしばしば未納となり、1439年までに未納額は26000石にまで達しました。これは例外的なケースではなく、ほとんど全ての守護請において、旱魃や洪水などを理由に年貢未納が頻発し、請所である荘園や公領は実質的に守護領となっていきました。守護請は守護領の拡大・蓄積を大きく促し、守護領国制を形成する重要な要因となったのです。

守護請の限界と荘園公領制の崩壊

全ての荘園や公領が守護請所になったわけではありません。守護やその他の武士による侵出に耐えながら存続した荘園も多く存在しました。しかし、守護請が荘園や公領の減少をもたらしたことは間違いなく、中世社会の根幹であった荘園公領制は急速に崩壊していくこととなりました。

脚注

守護請は、守護による荘園支配の重要な形態であり、その後の守護領国制の形成に大きな影響を与えた。
守護請による年貢未納は常態化しており、守護による荘園の実質的な支配を招いた。
守護請は、荘園公領制の崩壊を加速させる一因となった。

参考文献

永原慶二、『荘園』、吉川弘文館、1998年、ISBN 464206656X
岡田清一、「請所」『日本史小百科荘園』、東京堂出版、1997年、ISBN 4490202199
佐藤進一、『日本の歴史〈9〉南北朝の動乱』、中央公論新社、2005年、ISBN 978-4122044814

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