請所

請所（うけしょ/うけどころ）とは

請所とは、平安時代末期から室町時代にかけて、荘園や公領において、年貢や公事の徴収を請け負う制度、またはその対象となった土地を指します。この制度は、領主（荘園[[領主]]や国衙）が、荘官、地頭、守護などの在地勢力に、一定額（請料・請口）の年貢・公事の納入を請け負わせるものでした。

請所成立の背景

請所の原型は、平安時代に公領の経営を郡司や郷司に請け負わせていた郡郷請負に遡ります。荘園が成立すると、荘官（下司）が郡司や郷司の役割を担い、年貢・公事徴収を含む荘務全般を請け負うようになりました。また、国衙の在庁官人が、荘園[[領主]]の依頼を受けて年貢・公事の徴収を請け負うこともありました。治承・寿永の乱（源平合戦）により地方政治が不安定になると、荘園[[領主]]は現地の武士を荘官に任じ、下地の管理と年貢・公事の徴収を請け負わせることで、請所の仕組みが広く普及しました。

鎌倉幕府と請所

鎌倉幕府が成立すると、平家没官領を中心に、幕府が御家人を地頭に任命し、請所を行わせる地頭請所（地頭請）が成立しました。また、元々荘官として請所を行っていた武士が御家人となり、地頭に任じられた場合や、請所を巡る訴訟の結果、和与が結ばれて改めて請所関係が成立する場合もありました。

請所の請料は、作柄に関わらず毎年一定であったため、領主側にとっては安定した収入を確保できる利点がありました。しかし、未納や請負者の不正が発覚すると、領主と請負者の間で訴訟などのトラブルが頻発しました。鎌倉幕府も荘園[[領主]]と地頭間の訴訟に悩まされ、請所契約に対する規制を設けました。1222年には、地頭や御家人が請所を理由に、領主側の人間を追放することを禁じ、1268年には、請所契約に年紀法を適用し、契約から20年以上経過した契約を領主側が一方的に解除できないようにしました。

その後、1299年には年紀法の適用対象が制限され、1322年には国衙領の請所に対して、口入請所は解約不可能、私契約請所は1256年以前のものに限り、1284年以降のものは国司による進止が保障されるなど、契約の解除や継続に関して複雑な規定が設けられました。

請所の多様化

武士の影響が及ばない地域でも請所化が進みました。惣村的な自立が進んだ地域では、現地の百姓（荘民・郷民）による地下請（百姓請）が行われ、僧侶や商人、借上などが請負代官を務める代官請も存在しました。さらに、南北朝時代以降には、守護大名が請負者となる守護請も成立しました。

請所の終焉と影響

請所、特に地頭請や守護請においては、時代が下るにつれて未進年貢の増大や請所の押領が深刻化し、室町時代の荘園公領制の解体の一因となりました。しかし、請所としての武士の介入は、彼らによる荘園・公領の侵略・押領行為を抑制した側面も持ち合わせていました。

請所は、中世日本の社会構造と経済システムを理解する上で重要な制度であり、その変遷は、荘園公領制の変容と武士の台頭という歴史的動向を反映しています。

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