安中散

安中散（あんちゅうさん）

安中散は、主に胃腸の不調を改善するために用いられる漢方薬です。胃酸過多による胃痛、胸やけ、胃もたれ、食欲不振といった症状に効果があり、特に機能性ディスペプシア（機能性胃腸症）の治療薬として広く利用されています。安中散は、歴史ある医学書『和剤局方』に記載されており、その処方を基にした市販の漢方胃腸薬も数多く販売されています。

構成生薬

安中散は、以下の7つの生薬から構成されています。

桂枝（ケイシ）：体を温める作用があります。（エキス製剤では桂皮（ケイヒ）で代用されることが多い）
延胡索（エンゴサク）：鎮痛作用があり、痛みを緩和します。
牡蛎（ボレイ）：精神安定作用があり、神経質な状態を和らげます。
茴香（ウイキョウ）：消化を助け、胃腸の機能を整えます。
甘草（カンゾウ）：炎症を抑え、痛みを緩和します。
縮砂（シュクシャ）：芳香性健胃薬として、消化を促進します。
良姜（リョウキョウ）：体を温め、胃腸の冷えを改善します。

これらの生薬が組み合わさることで、安中散は総合的な胃腸の調整作用を発揮します。

適応

安中散は、体力が比較的低下している人で、腹部の筋力が弱い傾向がある人に適しています。具体的には、以下のような症状や状態に用いられます。

胃痛
胸やけ
吐き気
食欲不振
冷えや寒冷な飲食物による腹痛（特に上腹部）
機能性ディスペプシア
胃炎
胃アトニー
胃酸過多症
胃潰瘍による胃痛

また、神経質な方の、ストレスによる胃の膨満感や不快感などにも効果が期待できます。安中散は、胃腸の機能を整えるだけでなく、精神的な安定をもたらすことで、心身両面から症状の改善をサポートします。

商品

安中散は、医療用医薬品として処方されるだけでなく、一般用医薬品としても様々な商品名で販売されています。

タケダ漢方胃腸薬A / A末（武田薬品工業）
アンチュンN（小太郎漢方製薬）
太田漢方胃腸薬Ⅱ（太田胃散）：安中散加茯苓末を配合
大正漢方胃腸薬（大正製薬）：安中散末＋芍薬甘草湯エキス末配合
大正漢方胃腸薬「爽和」（大正製薬）：安中散末＋四逆散乾燥エキス末配合

このように、各メーカーから様々な商品が販売されており、自身の症状や好みに合わせて選ぶことができます。

脚注

安中散を使用する際は、添付文書をよく読み、用法・用量を守って正しく服用してください。また、症状が改善しない場合や、副作用が現れた場合は、医師または薬剤師に相談してください。

関連項目

平胃散
六君子湯

もう一度検索