安保清康

安保清康：日本の近代海軍を築いた男

安保清康(1843-1909)は、明治時代の海軍軍人であり、日本の近代海軍発展に大きく貢献した人物の一人です。最終階級は海軍中将に上り詰め、男爵の称号も授与されました。幼名は謙三、旧姓は林です。

激動の時代を生きた海軍の先駆者

安保は、広島県尾道市出身の医師の息子として生まれました。12歳で広島市に出て漢学と医学を学び、その後長崎で医学を修め、イギリス軍艦に乗り組み2年間、軍事学を学んだ経験を持ちます。この多様な学習経験が、後の海軍における活躍の礎となりました。

1865年には、前島密らと共に私塾で学んだ後、薩摩藩の講師として招かれた前島密に誘われ、薩摩藩へと移ります。薩摩藩では小松清廉や西郷隆盛らに請われ、海軍養成に尽力しました。

薩摩藩に軍艦「春日丸」の購入を島津久光に進言し、実現に導いた彼の決断力は、近代海軍建設において重要な役割を果たしました。「春日丸」艦長として、三条実美らを筑前から迎えに行くなど、重要な任務を遂行しました。

幕末から明治へ、海軍の創設と発展に貢献

戊辰戦争では、幕府艦「開陽」と阿波沖で戦闘を行い、その後奥羽越地方にも転戦しました。戦後も、兵庫軍務官出仕、「和泉丸」艦長、兵部省の役職などを歴任し、1871年には陸軍中佐となりました。

1872年、兵部省が陸軍と海軍に分割されたことを機に海軍へ転じ、海軍中佐に任官しました。海軍創設期において、安保は徴兵令の必要性を主張するなど、積極的に近代化政策を推進しました。

その後も、海軍省軍務局勤務、水平本部長、台湾蕃地事務局勤務、海軍省副官兼軍務局長、東海鎮守府副官、神戸臨時海事事務局長など、要職を歴任しました。佐賀の乱、台湾出兵、西南戦争などにも従軍し、1880年には海軍少将に昇進しました。

海軍中将への昇進と日清戦争

東海鎮守府長官、海軍省副官、規程局長、参事院議官出仕、元老院議官などを歴任した後、1886年には主計総監・会計局長に就任します。1889年には少将に復任し、海軍将官会議幹事、技術会議議長などを務め、1890年には海軍中将に昇進しました。

海軍大学校長、佐世保鎮守府長官などを務めた後、1894年に予備役に編入されましたが、翌年には召集を受け、呉鎮守府司令長官に就任しました。日清戦争における功績により、1896年には男爵を叙爵され、華族となりました。同年、「安保」に改姓しています。

坂本龍馬との交流と最期

安保は、坂本龍馬の晩年の友人でもありました。龍馬暗殺直前には手紙のやり取りをしており、龍馬からの面会要請に応じて上京した結果、暗殺の惨劇を目の当たりにしました。瀕死の中岡慎太郎から暗殺の状況を聞き、遺体の埋葬にも携わったと伝えられています。

1906年に後備役となり、1909年10月27日に逝去しました。青山霊園に埋葬されています。

安保清康が残したもの

安保清康は、激動の時代に数々の重要な役割を担い、日本の近代海軍の建設と発展に多大な貢献をしました。彼の経験と功績は、日本の歴史に深く刻まれています。彼の自叙伝『男爵安保清康自叙伝』は、彼の人生を知る上で貴重な資料となっています。彼の生涯は、近代日本の歩みと深く結びついており、日本の歴史を学ぶ上で欠かせない存在と言えるでしょう。

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