安国単于

安国単于（あんこくぜんう）

安国単于は、後漢時代の南匈奴の単于です。伊伐於慮鞮単于の子として生まれ、伊屠於閭鞮単于の弟にあたります。在位中に暗殺されたため、単于号はなく、安国というのは彼の名です。

生涯

左賢王時代

章和2年（88年）、休蘭尸逐侯鞮単于が即位すると、安国は左賢王となりました。しかし、その評判は芳しくなく、左谷蠡王の師子が勇敢で賢明であったため、単于や漢の天子から厚遇されていました。そのため、安国は師子を妬み、殺害しようと企てます。また、新降者の諸胡人たちも師子に恨みを抱いており、安国は彼らと共謀して師子を殺害する計画を立てました。

単于即位と師子との対立

永元5年（93年）、休蘭尸逐侯鞮単于が亡くなると、安国は単于の座に就きました。しかし、左賢王時代の企みを知っていた師子は、五原郡の縁辺に別居し、年に三回開かれる龍会議事（匈奴の国会）にも病気を理由に参加しなくなります。さらに、度遼将軍の皇甫棱が師子を擁護したため、安国単于はますます憤慨しました。

漢との関係悪化と最期

永元6年（94年）、安国は以前から不仲であった使匈奴中郎将の杜崇を告訴しようと画策します。しかし、杜崇はこれを阻止し、逆に度遼将軍の朱徽と共同で南単于討伐を促しました。和帝はこれを受け入れ、杜崇と朱徽の軍を南単于庭（南匈奴の本拠地）へ派遣します。漢軍の到来に驚いた安国は、拠点を捨てて逃亡。再度挙兵して師子を殺害しようとしますが、事前に察知した師子は曼柏城に逃れ、門を閉ざして籠城します。朱徽は両者の和解を試みますが、安国は聞き入れず、結局城を落とせずに五原へ駐屯します。その後、杜崇と朱徽による急襲を受け、部民は大いに恐れました。安国の母の兄弟である骨都侯の喜為らは、誅殺を恐れて安国を殺害しました。

安国単于は、その在位期間の短さと、周囲との軋轢、そして非業の死によって、歴史に名を残すこととなりました。

参考資料

* 『後漢書』（南匈奴伝）

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