使匈奴中郎将

使匈奴中郎将（しきょうどちゅうろうじょう）

使匈奴中郎将は、中国後漢時代に設置された官職であり、主に南匈奴を統括・監督するために置かれました。西河郡美稷県（現在の山西省呂梁市界隈）に駐屯し、南単于（南匈奴の君主）の護衛を主な任務としていました。秩禄は比二千石で、節（皇帝からの権威の象徴）を保持していました。属官として従事が2人置かれましたが、有事の際には必要に応じて増員されることもありました。

設置の背景

後漢の建武26年（50年）1月、光武帝（後漢の初代皇帝）は、中郎将の段郴を使者として南単于に派遣し、璽綬（皇帝の印と組紐）を授けました。これにより、南単于は後漢の臣下としての地位を確立しました。同時に、光武帝は段郴に雲中郡（現在の山西省北部）に入居するよう命じ、使匈奴中郎将を設置しました。この措置は、南匈奴を後漢の支配下に置き、北匈奴からの影響力を排除することを目的としていました。

職務内容

使匈奴中郎将の主な職務は、以下の通りです。

南単于の護衛：南単于の身辺警護を行い、安全を確保します。
南匈奴の統括・監督：南匈奴の政治、経済、軍事などを監督し、後漢の政策を遵守させます。
国境の警備：匈奴と漢の国境地帯を警備し、異民族の侵入を防ぎます。
異民族との交渉：匈奴を含む異民族との外交交渉を行い、友好関係を維持します。

護匈奴中郎将との関係

桓帝から霊帝の時代に任官した張奐や王柔の官名、また魏の太和5年（231年）に再び置かれた官名は「護匈奴中郎将」となっています。使匈奴中郎将と護匈奴中郎将は、名称は異なりますが、職務内容はほぼ同じであり、時代や状況によって名称が使い分けられていたと考えられます。

主な使匈奴中郎将

以下は、主な使匈奴中郎将の一覧です。

段郴（49年 - ？）
郭丹（？ - ？）
耿譚（？ - ？）
任尚（？ - ？）
杜崇（94年 - ？）
鄭戩（？ - ？）
耿種（？ - ？）
馬翼（124年 - ？）
張国（？ - ？）
王稠（？ - ？）
梁並（？ - 140年）
陳亀（140年）
張耽（140年 - ？）
馬寔（？ - ？）
种暠（？ - ？）
張奐（？ - 159年）
燕瑗（？ - 162年）
皇甫規（163年 - 166年）
張奐（166年 - 168年）：再任
臧旻（177年 - ？）
張脩（179年 - ？）
王柔（？ - ？）

関連項目

匈奴
護烏桓校尉
護羌校尉
護匈奴中郎将
度遼将軍

参考資料

『後漢書』（光武帝紀第一、百官志第二十八）

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